AIには答えられない「問い」がある――社会人が磨くべき「3つの能力」とは?:問いの設定力(1/4 ページ)
本記事では、グロービスで動画学習サービス『GLOBIS 学び放題』の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏が著書『AIが答えを出せない問いの設定力』をもとに、「AIが答えを出せる問いと、出せない問いの違い」や「これから人に求められる3つの能力」について解説する。
著者プロフィール:鳥潟幸志(とりがた・こうじ)
GLOBIS 学び放題 事業リーダー/グロービス経営大学院教員
「生成AIに入力する“問い”の質によって、引き出される回答に大きな違いがある」――。こう話すのは、ビジネススクールの運営などを手がけるグロービスで、動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏だ。
本記事では鳥潟氏の著書『AIが答えを出せない問いの設定力』をもとに、「AIが答えを出せる問いと、出せない問いの違い」や「これから人に求められる3つの能力」について、詳しく解説する。
連載「問いの設定力」
第1回:AIには答えられない「問い」がある――社会人が磨くべき「3つの能力」とは?
第2回:上司と部下の会話、なぜかみ合わない? “残念パターン”から探るコミュニケーションの深め方
第3回:「決めるのが怖い」と悩む管理職へ 今すぐ「決断力」を高めるために押さえるべき3つの視点
第4回「管理職じゃないし……」視座が低い部下 リーダーシップを育む3つのポイント
AIが答えを出せない「問い」とは?
現在、私はグロービスで動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務めています。同サービスでは生成AIを活用した機能も導入しており、私自身もエンジニア、デザイナーと共に、機能の企画・開発に深く関与しました。他にも、日常業務や英語学習など、AIを使わない日はないほどです。
そのようにAIと深く関わる中で、気付いたことがあります。それは「AIが答えを出せる『問い』と出せない『問い』がある」ということです。
その違いは何なのか?
一つは「仮説思考」にあると考えています。実際にChatGPT4oに問いを投げかけ、その回答を見ながら説明していきます。
まずはChatGPT4oに「目の前のお客さまが怪訝な表情をしている。どのような“問い”を投げかけて、物事を前に進めるべきか?」と入力してみました。すると「理解を深めるための問い」「選択肢を提示する問い」など、幅広い選択肢が示されました。
それが以下の画像です。「選択肢の考え方」についての回答は得られましたが、今、目の前の場面において、どの問いが最適なのかは示されていません。
そこで、同じ問いに「今すぐ対処が必要なので、シンプルに教えて下さい」と追加して入力をしました。
すると「何かご不明な点がございますか?」「この点についてご不安なことがあれば、教えて下さい」という案が返ってきました。これはこれで間違いではありません。しかし、実際の商談の場では、こうした一般的な問いかけをしても、「別に…」と濁されるケースも多いことが容易に想像できます。
つまりAIの出す答えは可もなく不可もなく、ごく一般的なもので、千差万別の人間が目の前に立つ場面で使えるかと問われると、最適とは言いづらいものであると思います。
では、同じ問いに対して、人間はどのような答えを出すのでしょうか。
例えば、目の前にいる相手の状況や興味関心を踏まえて「この点について気にかけているはずだ」という仮説を持ち、「この点についてわれわれはこのように考えていますが、どう思われますか?」と投げかけることができます。そうすると「実はこれが心配で……」と議論を深めていきやすいでしょう。
人間は相手の取り巻く状況や興味関心ごと、立場、目的といった文脈を理解し、「仮説思考」を持って問いを投げかけることができますが、AIでは難しいというのが現状です。それがAIと人間の大きな差だと捉えています。
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