2015年7月27日以前の記事
検索
コラム

「管理職じゃないし……」視座が低い部下 リーダーシップを育む3つのポイント問いの設定力(3/3 ページ)

ビジネスパーソンの多くは、「言われたことを全うする」、フォロワーシップの意識を持っていると思います。自身が管理職やリーダー層でない限りは、リーダーシップを身に付ける必要はないのでは? と考えている方も多いかもしれません。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

部下のリーダーシップを育むための3ポイント

 自律分散型の組織とは、組織のあらゆる方針をマネジャーが決めるのではなく、現場に近いメンバーも外部環境を的確に捉えながら、自身で判断することが求められる組織です。どのようにしたら、一人一人がリーダーシップを育むことができるのでしょうか?

 管理職から「メンバーの視座を高めるにはどうしたらいいのか?」「部下のマインドがなかなか変わらない……」という声を頻繁に聞きます。メンバーの変化を促すには3つのポイントがあります。

上司の「問い」

 メンバーの視座が高いというのは、隣接するメンバーの仕事や会社の状況を多面的に理解した上で、「自分がどうあるべきか?」が考えられる状態です。これが1つの理想形だとするのであれば、第2回(上司と部下の会話、なぜかみ合わない? “残念パターン”から探るコミュニケーションの深め方)でも紹介した、以下の「問いの設定力」のフレームワークを活用していただくとよいのではないかと思います。


「問いの設定力」の全体像(出典:『AIが答えを出せない 問いの設定力』より)

 マトリックスに示した横軸は思考の視点で、「問題」「要因」「解決策」というのが一般的な思考プロセスです。一方、縦軸は「自分」「チーム」「会社」といった視座の高さを示しています。

 例えば、ある会議中にメンバーが意見したとき、リーダーはメンバーの視座と視点がどこの領域にあるのかを考えてみてください。

 何か問題が起きた時に「これはチームに原因がありますよね」と言っているのであれば、視座は「チーム」、視点は「要因」の領域にあります。それに対して、リーダーは「あなた自身に改善すべき点はありますか?」と、自分自身に引き寄せた質問をしてみる。視座は「自分」、視点は「問題」の領域で問いを立てることで、改めて考えてみるようメンバーを促すことができます。

 また、何か問題が起きた時に「こうすべきです」とすぐに解決策を提案するメンバーに対しては、「そもそも何が問題なのだろうか?」と質問してみましょう。視点を「解決」から「問題」にズラした問いを立てることで、メンバーの考えを深めることができます。

 こうしたリーダーの問いによって、メンバーの思考も変わっていきます。さまざまな視座・視点から物事を多面的に捉える経験を積むことで、少しずつ視座が上がっていくのではないでしょうか。

意見を主張する機会を増やす

 私は、周りから自分の意見を求められた時、理由や根拠が整理できていなかったとしても、自分がその時に思ったこと、考え方を明確に発信したほうがいいと考えています。

 自分の意見を表明すると、周囲から否定されたり、根拠を問われたりと苦しい思いをすることもあるでしょう。ですが、これによって足りないことを認識し、自分自身の考えをブラッシュアップできます。

 意見を求められたときの対応の種類を整理すると、大きく3つに分類できます。上でお伝えしたのが「決めうち型」、他には「実況中継型」と「主張・根拠のセット型」があります。

・決めうち型

 限られた情報や直感を信じて意見を述べる対応です。自分がその時に思ったこと、考え方を明確に発信するが、その理由や根拠は整理されていない状況です。

・実況中継型

 状況を整理して述べる対応。これまでの周囲メンバーの意見や自分が知っている情報などを、整理するだけのタイプです。一見すると理路整然と意見を述べているようで、自分の意見は表明しない、つまりリスクを一切取らない動きです。

・主張・根拠のセット型

 自分の意見も根拠も明確な対応です。まずは自分の意見をしっかり表明した上で、その根拠を述べて相手に理解を促していきます。

 理想的なのはもちろん「主張・根拠のセット型」になりますが、それが難しい場合は、「決めうち型」をあえて意識した方が、結果としてリーダーシップを育むことができるでしょう。もしメンバーが「実況中継型」で対応している場合は、「では、あなたはどうしたい?」「あなたの意見を聞かせてください」と投げかけてみましょう。自分の意見を主張する機会を増やすことで、リーダーシップが磨かれていくと思います。

多面的な情報を提供する

 「それぞれのメンバーが、意思を持って判断をしてほしい」と願うのであれば、持っている情報を、可能な限り部下にオープンにすることが重要です。当然ですが、情報が何もなければ、思考を深めることも判断することもできません。会社の考えが分かっているからこそ、自分のやるべきことが見えてくるものです。

 実際に、変化のスピードが速い業界で成長する企業の多くは、情報がオープンです。経営に関連する情報に対して、社員がアクセスしやすい環境が整えられています。一人一人がリーダーシップを発揮するための条件の一つだと思います。

 ここまで、一人一人がリーダーシップを育むためのポイントをいくつかご紹介しました。日々の業務において、メンバーとコミュニケーションを取る上での参考にしてみてください。

GLOBIS 学び放題 事業リーダー/グロービス経営大学院教員 鳥潟幸志(とりがた・こうじ)

埼玉大学教育学部卒業。株式会社サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタント経験を経て、デジタル・PR会社のビルコム株式会社の創業に参画。取締役COOとして新規事業開発、海外支社マネジメントなど経営全般に携わる。グロービス参画後は、社内のEdtech推進部門にて「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修においてプログラムの講師なども担当。著書に『AIが答えを出せない問いの設定力』(クロスメディア・パブリッシング)がある。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る