「自分らしく生きる社会人」になるには? 地位や名誉に固執しない人がしていること:問いの設定力(1/2 ページ)
これまでの社会では、組織のルールに従いプロセスに従順で、期待された課題を解決し続けること、つまり、集団の“らしさ”に沿って生きることが評価されてきました。しかし近年では「自分らしく」「自分軸」「自分の価値観」「自己尊重」など、「自分」や「自己」という言葉が含まれたメッセージを多数目にします。この記事では「自分らしさを磨く方法」について詳しく解説します。
著者プロフィール:鳥潟幸志(とりがた・こうじ)
GLOBIS 学び放題 事業リーダー/グロービス経営大学院教員
これまで、AFTER AI時代(※)に突入した昨今では「問いの設定力」「決める力」「リーダーシップ」という3つの力が求められるとお話してきました。この3つの能力の質に大きな影響を与えるのが自分らしさに沿って生きる力です。これは、自分が大切にしたいことや人生で成し遂げたいことを認識し、自分を信じて突き進む力とも言えます。
本記事ではビジネススクールの運営などを手掛けるグロービスで、動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏の著書『AIが答えを出せない 問いの設定力』をもとに、「自分らしさを磨く方法」について詳しく解説します。
※本記事では、AI技術が目まぐるしい進化を遂げる現在を「AFTER AI時代」と定義する。
連載「問いの設定力」
第1回:AIには答えられない「問い」がある――社会人が磨くべき「3つの能力」とは?
第2回:上司と部下の会話、なぜかみ合わない? “残念パターン”から探るコミュニケーションの深め方
第3回:「決めるのが怖い」と悩む管理職へ 今すぐ「決断力」を高めるために押さえるべき3つの視点
第4回:「管理職じゃないし……」視座が低い部下 リーダーシップを育む3つのポイント
第5回:「自分らしく生きる社会人」になるには? 地位や名誉に固執しない人がしていること
ルールに従うだけではダメ 「自分らしさ」が求められる3つの背景
これまでの社会では、組織のルールに従いプロセスに従順で、期待された課題を解決し続けること、つまり、集団の“らしさ”に沿って生きることが評価されてきました。しかし近年では「自分らしく」「自分軸」「自分の価値観」「自己尊重」など、「自分」や「自己」という言葉が含まれたメッセージを多数目にします。実際に過去数年のメディアでは、「自分」「自己」をテーマにしたタイトルが増えていると感じています。
また、就活情報サイトを運営する学情が2023年に発表した調査結果では、就職活動において「自分自身が成長できそうか」を重視する学生が9割に迫っており、「終身雇用が当たり前ではないので、成長し続けることが必要だと思う」という声が多数寄せられました。もちろん、これまでのように組織・集団・社会を重視する文化は依然として残っていますが、個人を重視する価値観が近年急速に高まっているともいえるのではないでしょうか。
ここで、自分らしさが求められるようになった背景を3つの観点から解説します。
(1)外部環境の変化
現在の社会は過去に見ないほど早いスピードで変化しています。これまでの安定した環境であれば、例えば企業、組織運営においても一部の経営幹部が長期の方針を立て、それに沿って組織が適切に運営されてさえいれば問題ありませんでした。組織に所属する個人も、組織の規範や仕組みを崩してまで自己主張をしなくても、毎年安定的に報酬が上がっていきました。
しかし、会社が終身雇用を保証してくれるわけではなくなった今、当然、一般のビジネスパーソンの中には危機意識が芽生えます。そのような中でキャリア自律やキャリアオーナーシップの必要性が叫ばれるようになっていきました。つまり、自分の人生そのものを会社に依存するのではなく、自分自身で考え、決める必要があります。
(2)内的欲求の変化
米国の著名な心理学者であるアブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」は、「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つの階層構造で成り立っています。生理的欲求や安全欲求など低次の欲求が満たされると、一段階上の欲求が高まり、その欲求を満たすための行動を起こすようになるという主張です。
現代の多くの人は低次元の欲求が満たされているため、無意識的に高次元の欲求である自己実現欲求が高まっていると考えられます。「自分の能力を生かし自己の成すべきことを成す」ということが、評価や報酬以上に重要視されているのです。
(3)比較対象の変化
日常的にSNSを活用し情報を取得している人は多いと思います。SNSは簡単に他人とつながり、自分と異なる情報にアクセスできる便利なツールである一方で、他人と自分を比較し、自己を過小評価してしまうリスクもあります。
SNSという便利なツールを手にしたことで、本来は関係の薄い、自分とは前提が異なる人と無意味に比較をして、「自分とは何か?」を無意識に考えてしまう状態が増えていると考えられます。
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