「まずは自由にやってみ?」→後からダメ出し 若手をつぶすダメ上司のフィードバック3選:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
フィードバックは誰にだってできる。しかし正しいフィードバックをするためには、相応の知識と経験が必要だ。
若手社員のメンタル不調が深刻化する理由
昨今、若手社員のメンタル不調が深刻な問題となっている。パーソル総研の調査(2024年12月)によると、メンタル不調を経験した20代の約4割が退職を選択したという。上司は「仮病なのでは?」と疑うこともあるが、実際の仮病はわずか1%にすぎない。
なぜ、若手社員はこれほどまでにメンタル不調に陥るのか。原因の一つに「拒否回避志向」の強さがあるといわれている。拒否回避志向とは、他者からの否定的な評価や拒絶を避けようとする傾向のことだ。
例えば上司に相談に行こうとして、「今は忙しい」と言われただけで相談する気力を失ってしまう。「自分なんかどうでもいいと思われている」と考え込んでしまう。商談の場面でも同じだ。お客さまから「うちは他社の製品を使っているので」と言われただけで、まるで自分自身が否定されたような気持ちになる。
以前、こんなことがあった。会議の席で、新入社員が自分なりのアイデアを披露してみせた。すると上司が、
「ちょっとそのアイデアは難しいね」
と柔らかく返した。さらに
「でも、アイデアを出すことはいいことなので、ドンドン言ってほしい」
とフォローもした。
ところがこの若者は「自分は認められていない」と思い込んでしまったそうだ。それからというもの、上司や先輩のメールの返信が遅かったり、社内イベントの誘いを断られたりしただけでも、過剰に気にしてしまうようになった。
なぜ「とりあえずやってみて」「自由にやってみて」と言ってはいけないのか
昨今は「主体性を重んじたほうがいい」と思い込む上司が多い。そのため若者には「自分なりに考えて」「自由にやってみて。任せるから」と言いがちだ。強制させてはいけないと勘違いしているからだ。しかし、このような言葉が若者を追い込むことがある。
とくに昭和世代の上司は「経験学習モデル」で指導しようとする。
まずは経験させ、その経験を振り返らせ、そこから学ばせるという方法だ。しかし拒否回避志向が強い若者には、やるべきでない。
「まずは経験が大事って、言われても……。どうすればうまくいくか。教えてくださいよ」
という発想なのだ。
自動車教習所で例えると分かりやすいだろう。いきなり運転させるわけではない。まず教室で座学を行い、次に構内で基本動作を練習する。そしてようやく公道に出るのだ。
それも最初から幹線道路を走らせるわけではない。交通量の少ない道路から練習を始め、徐々に難易度を上げていく。このような段階的な指導が、拒否回避志向の強い世代には必要なのである。
「まずは自分なりに企画書を書いてみて」
こう言って、ろくに企画書作成について知識も技術も学ばせていないのに「まずはやってみて」と経験させようとする。そして上がってきた企画書を見てドヤ顔でダメ出しのフィードバックをしようものなら、若手社員が仕事がイヤになってしまうのも無理はないだろう。
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