「ミズノらしさ」を消して2000万円売れたシューズ 思い切った決断の背景:テストマーケティングから見るプロダクトの近未来(2/2 ページ)
企業にとって「ブランド」は大きな強みです。特に多くのファンを抱えているスポーツブランドであれば尚更でしょう。しかし、それが時に「選ばれない理由」になることもあります。
ターゲットも大幅に変更
また、ターゲット設定も大胆に変更しました。これまでのミズノのメインターゲットであるスポーツユーザーではなく、日常で履ける快適なシューズを求めるビジネスパーソンやカジュアル層に向けたのです。履き心地に定評のあるミズノの技術を生かしながら、ブランドの強い主張をあえて抑えることで、「ミズノの靴を履いたことがない人」にも手に取ってもらえるよう設計しました。
大胆なデザイン変更がされた新モデルは応援購入サイトMakuakeで先行販売され、結果として2000万円以上を売り上げるヒットとなりました。さらに、一般販売に移行してからも人気を維持し、ECサイトでも売れ続けています。
「ミズノの靴を履いたことがない人」にも手に取ってもらいたいという狙いの通り、購入者の応援コメントの中には「ミズノを買うのは初めて」といった声がいくつも見られました。加えて、一般販売時の購買層についても、既存商品の主要顧客層とは異なり「ビジネスシーンでも履ける」「ミズノの靴は久しぶりに買ったが、履き心地がいい」といったコメントが相次ぎ、新たなターゲット層に届いたことが明らかになりました。
今回のミズノの挑戦は、ブランドの持つ技術力を生かしながら、デザインやターゲットを変えることで新たな市場を切りひらけることを証明したといえます。
重要なのは「何を変えて、何を残すか」という視点です。ミズノは機能性という最大の強みはそのままに、デザインという「見た目のハードル」を取り除くことで、これまでリーチできなかった層にアプローチしました。ブランドらしさにこだわるのも戦略ですが、時には引き算の発想が新たな成長の鍵となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
カセットガスで「暖炉のある暮らし」に 開発者の執念がヒット商品に
開発者自身が最も欲しかった商品が、新たな市場を切り開いた。
悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に
「見方を変える」だけで商品価値が劇的に変わる──。新潟の中小企業が仕掛けた、売れないハサミを大ヒット商品に変えた逆転のマーケティング戦略とは。
令和のバーキン? 今年も人気 ユニクロのバッグ、秋冬向けに改良も「在庫ほとんどない」
ユニクロが2024年秋冬最新モデルとして販売した「ラウンドショルダーバッグ/キルト」が今年も人気だ。
「うどんみたいな布団」が突如爆売れ、Xで16万いいね 「売れたらラッキーくらいに思ってた」と担当者
Xで「万バズ」となった「うどん状の布団」。一体どのような商品なのか。
ぬれる“スキ”を与えない傘はなぜ生まれた? 見過ごされがちな感情にヒント
テストマーケティングの事例から学ぶヒット商品開発のカギ。見過ごされがちな感情に隠されたヒントがある。




