なぜマツダは「売らない拠点」を作ったのか? その先にある“マツダらしさ”とは:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
マツダが開設した「MAZDA TRANS AOYAMA」は、ブランドの世界観を周知するための施設だ。自動車メーカーがクルマを販売しない拠点を設ける試みは以前からあり、商品やブランド価値の発信に一役買っている。今後もブランド力の強化と発信が重要になりそうだ。
人気を集めたトヨタの巨大施設
自動車の展示専門のショールームは、実はこれまでにいろいろなブランドが試みてきた。
最大かつ多面的であったのは、トヨタが東京・お台場で2021年まで展開していた「MEGA WEB(メガウェブ)」であろう。トヨタ車のほぼ全てを展示していただけでなく、コンセプトカーやレーシングカーといった特別な車両の展示やカジュアルなレストランまで併設していた。
隣接する「ヴィーナスフォート」と連携して、いにしえの名車を展示する博物館やカフェのほか、ミニカーやカーグッズなどのショップを設け、クルマ好きをショッピングモールへと誘導する動線まである、よく練り込まれた施設であった。
専用コースを使った低料金の試乗体験は、レンタカーやディーラーでの試乗とも違う、気軽に楽しめるもので、そうしたプチ試乗はその後のディーラーへの来店機会を増やすものでもあったはずだ。
2021年に閉館したトヨタのMEGA WEB。市販車のほとんどを展示する巨大なスペースというだけでなく、コンセプトカーや新技術の展示、旧車の博物館、グッズショップに試乗体験など、充実した施設であった(写真:Sergio Yoneda - stock.adobe.com)
近隣の東京ビッグサイトで東京モーターショーが開催されていた期間は、連動企画として、ヴィーナスフォートの中でもさまざまなクルマを展示したものだ。また、専用コースを有することで、レーシングカーなどの走行を披露するイベントも開催され、かなりの来場者を集めた人気の施設であった。
自動車メーカーの本社にこうしたショールームが設けられ、訪れる人々に自社製品や技術などを紹介するのは一般的なことである。だが、販売ディーラーではなく展示だけを目的としたショールームはそれほど多くない。
日本におけるその先駆けはBMWのショールームであろう。BMWは1994年に東京・青山に「BMWスクエア」という都市型のブランド発信拠点をオープンさせた。
現在は「BMW青山スクエア」の名で、BMW東京の1拠点として販売なども行うディーラーへと変化したが、最近までBMWの世界観を伝えるスペースとして情報を発信し続けてきた。
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