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「ギガの売買」はユーザーに刺さるのか メルカリモバイルが見込む「金脈」(3/4 ページ)

ギガが余るなら売る、足りなければ買う。一見シンプルに見えるこの仕組みだが、仕組みをよくよく見てみると、思いの外複雑さが見えてくる。

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ギガ売買が生み出す「複雑な市場」

 メルカリモバイルの最大の差別化ポイントとなる「ギガの売買」機能。月々のデータ通信量が余っていると感じる人が65%、足りないと感じる人が35%というギャップに着目し、需給をマッチングさせる狙いだ。


メルカリの調査によるデータ通信量のギャップを示すグラフ。ギガが余っていると感じる人が65.7%、足りないと感じる人が34.3%という需給のミスマッチが明らかに

 「余ったギガを売上金にして、メルカリやメルペイでのお買い物に使うことができる」と永沢氏は説明する。不要なギガを売ることで、実質的に通信料金を安くする効果も期待できる。


メルカリモバイル発表会で、「ギガも、メルカリ」をアピールするメルカリ執行役員CEO Fintech兼MVNO責任者の永沢岳志氏。アプリ画面では残りギガ量の確認や売買ができる直感的なUIを採用

 しかし、この仕組みをよく見ると、実はかなり複雑だ。最大の難点はメルカリモバイルのギガの有効期限が月末までという点にある。売りに出したギガも、買ったギガも同様に月末で失効する。

 これは言い換えれば、ギガの価値が時間の経過とともに下落していくという特殊な商品だということだ。例えば月初に購入したギガは1カ月近く使えるため価値が高いが、月末直前に余ったギガを出品しても、買う側からすれば使用できる期間はわずか数日、あるいは数時間に過ぎない。月末最終日にはほぼ無価値化する恐れもある。

 こうした「賞味期限付き商品」的な性質は、ユーザーに時間的な駆け引きを強いることになる。月中で余りそうだと判断したら早めに売り出すべきか、それとも月末まで使えるように手元に残しておくべきか。あるいは月初に多めに買っておくべきか、必要になったタイミングで買うべきか。こうした判断は一般ユーザーにとって必ずしも容易ではない。

 2GB・20GBという2つのプランも、思わぬ駆け引きを生み出す。2GBプランの加入者は基本的にギガを買う前提、20GBプランの加入者は売る前提となるだろう。しかしどちらが得になるかは、結局のところギガの市場価格次第という奇妙な構図が生まれている。

 単純計算では、20GBプランの加入者が10GBを3000円以上で売れれば黒字になる可能性すらある。バルク(大量)で仕入れて小口で売るという、まるで小売業のような市場原理が働く可能性もある。

 そして、この市場価格は複雑な要因で常に変動する。月初と月末では需給バランスが根本的に異なるし、多くのユーザーが2GBプランを選べば売り手より買い手が多くなり価格は高騰するだろう。逆に20GBプランが人気になれば売り手が増え価格は下落する。さらに各ユーザーの通信パターンも月によって変わるため、市場の予測はいっそう難しくなる。メルカリは「シンプルで分かりやすいサービス」を標榜(ひょうぼう)するが、実際にはかなり高度な経済感覚が求められる仕組みになっていないだろうか。カジュアル層がこうした複雑な市場原理を理解し、うまく立ち回れるのかという疑問は残る。


メルカリモバイルのギガ売買画面。どれが一番安いか、自分でスクロールして探す必要がある。1Gを5つ買うのと、5Gを買うのとどちらが安いかも計算が必要だ

 取引のUIにも改善の余地がある。ギガの内容は出品者によらず同一であるにもかかわらず、現状では出品者ごとに新しい順で表示される仕様だ。本来であれば、ギガ量ごとに最安値のものから表示されるほうが合理的だろう。

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