部下もあきれる「自己陶酔型リーダー」に共通する“話し方”:「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)
部下たちは形だけ聞いているふりをするが、おそらく何も頭に入っていないだろう。
なぜ「チャンク化」が重要なのか
では、なぜミラーの「7±2」と実際の処理能力にこれほどの乖離があるのか?
答えは「チャンク化」にある。例えば電話番号「0312345678」は9桁の数字だが、「03-1234-5678」と区切れば3つのチャンクとして記憶できる。情報を意味のある塊にまとめることで、処理能力は拡張できるのだ。
しかし重要なのは、チャンク化できるのは「既知の情報」に限られるということ。初めて聞く複雑な概念や専門用語は、チャンク化が難しく、一つ一つが独立した情報として処理負荷がかかるのである。
相手の理解を促進する3つの方法
「自己陶酔型リーダー」にならないために、どのような工夫をすればいいのか。
情報の取捨選択を徹底する
情報を削ることは意外と難しい。特に準備に時間をかけたプレゼンであればあるほど、全てを伝えたくなるものだ。しかし「全て伝えよう」とするより「必要最小限を確実に伝える」意識で臨むほうがいい。結果的に相手の理解度は高まる。
伝える情報に優先順位をつける
「これだけは絶対に伝えたい」という最重要点を1〜2つに絞り込もう。3つ目以降は「伝わればうれしい」程度の位置付けにする。そうすることで、聞き手は本当に重要なポイントに集中できる。
具体例を効果的に使う
抽象的な概念は理解しづらい。具体的な事例や身近な例えを使うことで、相手の理解を助けることができる。「この戦略によってA社は売上を20%伸ばした」という具体例のほうが、抽象的な理論よりも記憶に残りやすい。
自分で気付かないリーダーへのアプローチ法
もし周囲に「自己陶酔型リーダー」がいる場合、どう対応すればいいのだろうか?
直接的な指摘は相手のプライドを傷つける可能性がある。代わりに「要点をまとめてもらえますか?」と質問したり、「具体例があると理解しやすいです」と提案するのが効果的だ。また、会議の前に「今日は何を決めたいのか」と目的を明確にしてもらうこともいい。
情報過多の時代においては「情報を減らすコツ」がますます重要になっている。伝える情報量を減らすことは、実は相手への敬意を示すことでもあるのだ。話す相手の情報処理能力を考慮し、本当に必要な情報だけを伝えるリーダーこそが、今は求められている。
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