社員の学びへの「投資対効果」が検証できない──村田製作所はどう解決?:ベネッセが共同で調査(3/3 ページ)
企業・従業員の双方にとって、学び(リスキリング)による新たなスキル獲得が急務となっている一方、中長期的な学びへの投資対効果(ROI)の検証や、個人学習と組織成果との関連を明らかにすることは非常に難しい。今、個人の学びや成長を組織の成果や発展に結び付ける仕組みづくりに注目が集まってきている。
“学びのギャップ”の解消が重要に
最後に、Udemy事業本部ラーニングデザイン部部長の内木場氏は、ベネッセの今後の展望について語った。
「企業の中にいる組織の学びを推進しようとされている方々は、熱い思いを持って取り組まれています。また、現場の従業員の方々も、さまざまな変化に対する不安を持ちながらも成長したいという思いを持っています。しかし、今回の2つの調査を通じて、組織と社員の間にはギャップがあるのではないか、と感じました」(内木場氏)
例えば、企業側は従業員に学んでほしい内容や貢献してほしい方向性について期待を持っているが、従業員側にはその期待感が見えていないケースもある。こうしたギャップを解消することで、企業のラーニングカルチャーがさらに強化され、個人と組織の学びがより効果的につながることが期待される。
今回の調査から、個人の学びを組織の成果につなげるためには、単に学習環境を整えるだけでなく、心理的安全性を確保し、学びを共有・活用する文化を組織全体で醸成することが重要であることが明らかになった。具体的には、学んだ知識を共有する場の設置や、実践の機会の提供、学習者同士のコミュニティー形成など、組織学習を促進する取り組みが効果的だ。
人口減少と技術変化が加速する中、企業が持続的な競争力を維持するためには、個人と組織の学びをつなぐラーニングカルチャーの醸成が不可欠である。ベネッセと村田製作所の共同調査は、そのための具体的な道筋を示す貴重な研究と言えるだろう。
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