新入社員「Web会議でカメラオンにする必要なくないですか?」 上司のあなたはどう答える?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/4 ページ)
「上司として、どう答えていいか分からなくて……」 ある大手製造業の部長から相談されたのは、不思議な話だった。
新入社員への建設的な答え方
では、冒頭の質問に上司はどう答えるべきか。私なら次のように答える。
「単に情報を交換するだけなら、確かにカメラオフでも構わないかもしれない。しかし、会議は単なる情報交換の場ではなく、信頼関係を築く場でもある。顔の表情から読み取れる微妙な反応は、言葉だけでは伝わらない。また、多くの人は『見る』ことで情報を理解する。君の表情が見えなければ、発言の真意が伝わりにくくなってしまう。それに、顔を見せ合うことで相互理解が深まり、組織としての一体感も生まれる。だから、できるだけカメラオンで参加してほしい」
Web会議の「カメラオン」は単なる形式やルールではない。人間のコミュニケーションの本質に根ざした重要な要素なのだ。
時代が変わっても変わらないもの
さて、今回はWeb会議の「カメラオン」問題について取り上げた。ただ、それだけで本コラムは終わらせたくない。最後に私なりの主張も書いておきたい。
私は『脱会議』という書籍の著者である。そもそも会議というコミュニケーションスタイルに肯定的ではない。ムダな会議は組織の生産性を極めて悪くする。つまり、カメラオンが必要かどうか以前に、その会議そのものが必要かどうかは上司にしっかり考えてもらいたいと思う。
交流や信頼関係を築くことも目的であれば、当然「カメラオン」にすべきだろう。しかし、もっと効果的なのはオンラインではなく、リアルに集まることだ。顧客相手ならともかく、同じ職場のメンバーであればリアルで会う。そのほうがはるかに「非言語データ」を相互に開示できる。
もし言語データのみで意見交換をしたいのなら、Slack、Chatworkなどのビジネスチャットのほうが断然効果的だ。チャットのほうが、若い人の発言を引き出しやすい(これはいろんな業界で実施した結果、明らかだ)。
「チャットは慣れていないんで……」などと上司が言い訳するのなら、新入社員から「カメラオンする必要なくないですか?」といわれても何も言い返すことはできまい。単に自分が慣れているコミュニケーションスタイルに新人を合わせようとしているだけなのだから。そんな自分本位の姿勢は、今の時代では支持されない。
現在はマルチメディア、マルチコミュニケーションの時代である。目的やシチュエーション別に合わせられるよう、若い人だけでなくベテラン社員も慣れていかなければならない。
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