迷走するトランプ関税 自動車業界で得をするのは誰なのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
米トランプ政権の関税政策が世界を振り回している。自動車業界への影響も大きいが、日本メーカーは過去の貿易摩擦問題によって、すでに海外における現地生産が進んでいる状況だ。目まぐるしく方針が変わる関税政策に対して、どのように交渉していくのか。
自動車関税の狙いは「現地生産の拡大」だが……
関税(正確には国境関税)とは、国内に商品を持ち込むなら税金を納める必要がある、という制度だ。 国家は予算を確保するため、国民に税金を課し、国債を発行して資金を調達している。
関税は海外から持ち込まれる物品に対して輸入する者が支払う税で、個人輸入でもビジネスとして輸入しても徴収され、相手国や品目により税率などが定められている。最終的に経済のバランスを国家単位でとる以上、これは当然のことだ。
特に自動車は高価であり、購入後もメンテナンスなどで部品が販売されるため、輸入金額も大きくなる。
関税はクルマ本体だけでなく、部品レベルでも課せられることが多い。どんな品目をどんな税率にするかは輸入する国が決めるので、交渉によってお互いにゼロ関税として貿易を行いやすくしたり、輸入品の価格調整によって自国産業を保護したりすることに利用されている。
トランプ政権が目指したのは、関税を引き上げることにより、海外で生産して米国内で販売しているクルマの生産拠点を米国内へと移させることだった。これにより国内産業が活気付き、強い米国を取り戻す、というのが、国民に向けたトランプ大統領のメッセージだった。
しかし、事はそう単純には進まない。あくまでもトランプ大統領は自分の実行力を米国民に証明することを優先して、過激な発言や行動を起こしているだけなのだ。その証拠に、すでに何度も関税に対する条件は変更されている。それによって、より現実的な政策へと修正していく、行き当たりばったりの手法なのだ。
米国と貿易している国はそれに巻き込まれている状況で、米国債市場や米国株式市場、為替市場も乱高下するなど、米国内の経済も混乱に陥っている。
中でも自動車業界への影響は大きく、各国の自動車メーカーの経営陣は動揺を隠せない。
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