パナソニックが開発した「ととのう風」 サウナ施設で自然の風を再現する理由(3/5 ページ)
パナソニックグループの空質空調社は、自然の風を再現した「ととのう風」を作り出す気流デバイスを開発した。温泉施設やサウナで実証実験を始めているが、「ととのう風」とはどんな風なのか。
サウナ施設の休憩スペースで実験
当初は、気流デバイスをオフィスやホテル、住宅などに導入しようと、実際に体験できるショールームを設けて提案していた。ただ、小規模で設置する場合、数百万円と高価格帯になるため導入がなかなか進まなかった。
そんなとき、日本サウナ学会から「全国にたくさんあるサウナ施設で展開してみては」という提案を受け、サウナにおける「ととのい体験」の価値を上げる取り組みとして実証実験を始めた。
「ととのい体験は、『心拍数の変動』に関連しています。サウナ、水風呂を経て、最後の外気浴の際に心拍変動が高いほど、『ととのっている』と評価されます。その基準に当てはめたとき、『無風』『扇風機』『ととのう風』を比べると、『ととのう風』が最も高い結果となりました」(小田氏)
2024年8月、三井不動産グループが運営するサウナ施設「HUBHUB御徒町」で実証実験を開始した。高架下の遊休地にトレーラーハウスを設置して作られた施設で、室内にはフィンランド式サウナ、水風呂、休憩スペースがある。
休憩スペースは四方が壁に覆われていて、天井と壁の間に隙間がある。外気は入るが風が通り抜ける設計ではない。このように大部分が密閉された、あるいは完全な密閉空間の休憩スペースを備えるコンテナサウナは全国に多くあり、感電のリスクがあるため、扇風機の設置も難しい。そこで、コンテナサウナへの将来的な導入を視野に入れ、HUBHUB御徒町に設置したという。
本実証実験にあたり、「ととのい体験」をより向上させるために、気流デバイスにハイレゾサウンドスピーカーを内蔵した。人の耳には聞こえない高音域や繊細な音を再生できるスピーカーで、森林などの心地よい環境で発生する音を再現している。この人間の可聴域を超えた音を肌から吸収することで、リラックスしやすくなるそうだ。
利用者から「風に包まれる感じがある」といった感想は得られているが、現時点では「ととのい体験」の向上にどのくらい寄与しているかのエビデンスは取っていない。季節に応じた心地よい風の強さなどは、ある程度分かってきたため、今後は数値の検証を予定している。
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