「マツダCX-60」はスタートラインに立てたのか “フルボッコ”試乗会からの逆転劇:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
乗り心地に難があったマツダCX-60は、マイナーチェンジによってどう変わったのか。快適性が高まり、生まれ変わったと思えるほどの変化を感じた。エンジンの進化も続いており、今後もクルマとしての魅力を高める取り組みに期待できそうだ。
マツダのクルマ作りはようやく完成の領域へ
最近は輸入車のリセールバリューがどんどん低下している。一方、マツダは、かつて値引き販売を主軸にしていた頃は、口の悪い人から「マツダ地獄」と呼ばれるほど、リセールバリューが低く、マツダ車以外に買い替えることが難しいと言われていた。
しかし、2015年から始めた「ものづくり革新2.0」によってマツダのクルマ作りはガラリと変わった。デザイン、パワーユニット、サスペンションが一新されただけでなく、独自性が高まり、技術力だけでなく内容が洗練されたことが印象的だった。
それまでもデザインやエンジンには定評があったが、ロータリーエンジン以外はマツダならではの個性が伝わりにくかった。
しかし「魂動デザイン」が生み出され、代を追うごとに洗練さを極めていく。パワーユニットも、独自技術の「SKYACTIV」で燃費と動力性能のどちらも向上させていった。
その集大成とも言えるのが、このCX-60に搭載されている直列6気筒のディーゼルエンジンだ。燃焼室の酸素を燃やし切る必要がないディーゼルエンジンの強みを生かし、軽負荷時にはエンジンにわずかな燃料を噴射して走り、高負荷時にはモーターの力で負荷を軽減する。エンジンの負荷を軽減することで燃費の向上につなげているのだ。
大排気量で燃料を少ししか噴射しないのなら、小排気量でいいのでは? そう思う方もいるだろう。ガソリンエンジンのダウンサイジングでは、そう考えて小型軽量を追求したが、高負荷時の燃費が悪くなり、システムが複雑になったことで生産コストとメンテナンス費用が上昇した。
一方、ディーゼルエンジンは燃焼室の空気すべてを燃やす必要はなく、それどころか燃焼によって発生した熱によって空気が熱膨張するため、冷却損失を抑えることにつながる。従来であれば捨てていた熱エネルギーを、ピストンを押し下げる力やタービンを回す力に有効活用できるのだ。
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