その採用、大丈夫? 日本にも広がる「民間企業のスパイ活動」:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
日本企業の情報が盗まれて海外に渡るケースが増えており、「企業インテリジェンス」が注目されている。世界的な調査会社の日本支社長に取材すると、その活動の一端が見えてきた。企業のビジネスを守るために、どのような対策が必要なのか。
どのような依頼で、何を調査するのか
まず、企業インテリジェンスとは、一体どういうものなのか。クロールに多く寄せられる依頼の一つが、M&Aや協業、投資などの相手企業の徹底調査だという。
企業の財務情報などを精査するのは言うまでもないが、そこからさらに、その企業にどのような評判(レピュテーション)があるかも調査する。かなりディープに内部や関係者の証言を収集するだけでなく、SNSなどでどのような声があるのかを調べ、悪評があるなら誰がそれを流布しているのかまで調べ上げる。
企業や政府関係機関への投資の場合、投資先や担当者らに何らかのリスク要因が存在しないかを調べるケースも少なくない。協業相手についても調査が行われる。例えば、過去に行政処分などを受けていないか、メディアでスキャンダルが報じられていないかといった情報も集める。
クロールは、世界34カ国で約6500人の専門家やエージェント(調査員)を抱え、日本支社でも日本企業のために精鋭チームを編成し、いわゆるヒューミント(人的スパイ活動)を行う。
日本支社長の山﨑卓馬氏は「調査を行うエージェントは、日本国内と海外で法執行機関や公安組織、軍などのネットワークを持っており、法律税務会計の専門家、メディア関係者、戦略コンサルタントなど、さまざまな分野に精通した専門家たちです」と説明する。
そのようなエージェントが「複数の情報ソースからファクトを精査して、依頼企業の意思決定を支援しています」と、山﨑氏は言う。山﨑氏自身も、大手企業で国際的なM&Aやその後のPMI(経営統合)などに従事してきた。日本でも数少ない、企業リスク管理と危機対応、企業インテリジェンスの専門家として日本支社を率いている。
こうした精鋭たちが、企業の依頼に応じてさまざまな現場でインテリジェンスを収集する。要するに、ビジネス分野で活躍する「民間スパイ」のような人たちだと言えそうだ。
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