早期退職ブームの裏で 中高年を「頼れるおじさん」に育てられる職場、3つのポイント:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
希望退職という名の“肩叩き”が拡大する一方で、“潜在能力”に期待し能力発揮の機会を拡大する企業が増えてきました。50歳になった途端、まるで在庫一掃セールにでもかけるように、賃金を下げ、閑職に追いやり、「早くお引き取りいただきたい」圧をあの手この手で企業はかけつづけてきましたが、その不遇にピリオドを打つ動きが広がりつつあります。
いち早く改革に乗り出した企業たち
いち早く改革に乗り出した企業の一つが三谷産業(金沢市)です。1928年に創業し、変化することを恐れず、変化に追随するのではなく、変化を起こす側に回ることで生き残ってきた企業が、2021年4月から「無期限の継続雇用制度」をスタート。65歳までの雇用形態を正社員化=マスター正社員とし、66歳以降は雇用の上限年齢のない嘱託社員=マスター嘱託社員としての継続雇用制度を導入しました。
追加で引き受けた仕事に対し、給与とは別に対価を支払う「出来高オプション制度」も導入。最大のポイントは、継続雇用を終える時点での「第二退職金制度」で長期間にわたる会社への貢献に応えることです。これらの制度設計は、創業家が所有するガソリンスタンドの運営会社で2017年に定年を廃止し、それが60歳以上の社員の活性化につながったことが反映されているそうです。(日経ビジネス 2021年2月9日)
村田製作所では2024年4月から「65歳定年制」を導入。59歳以前の賃金体系を継続適用し、貢献度・役割発揮に応じた賃金も支払われます。60歳で海外転勤もオッケーとのことですから、エイジズムの徹底排除も同時に行われています。
中外製薬でも2026年から雇用上限年齢を撤廃。60歳でいったん退職金が出ますが、以降も正社員と同等の待遇で働け、昇格も希望できます。NTTコミュニケーションでは「キャリアデザイン研修」と、「キャリア面談」をマンツーマンで徹底的に行い、自分で考え、自分で希望し、自分で動く、自立キャリア支援を行いました。地方や海外転勤を希望する中高年も出てきたそうです。
ある企業の社長さんは「中高年がいいのはね、毎日真面目に働いているって確信がもてるからだよ。常識があるしね」と話してくれたことがあります。「え? そんなこと?」と思われるかもしれませんが、働き方の価値観も様変わりしたので、雇用主側からみればこれらの「フツーのこと」が案外重要なのでしょう。
これらの動きを鑑みれば、セカンドキャリア、サードキャリアを受け入れる「場」は確実に増えているので、あとは「あなた」次第です。必ずしも思い通りにはならないかもしれないし、時間もかかるかもしれません。それでも「7割成功すればいい」と考え、一歩踏み出せば、確実に「光」がともる環境ができつつあります。
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