BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”:高根英幸 「クルマのミライ」(2/6 ページ)
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
軽EV開発の予兆はあった
「BYDが軽規格のEVを開発する」予兆は年初から現れていた。2025年2月に東京ビッグサイトで開催された展示会「スマートエネルギーウィーク」で、BYDブースの隣でライバルであるCATLが軽自動車用のバッテリーパックを展示していたからだ。これを事前に知らなかったとしたら、BYD側のショックは相当なものであり、自社でも開発を急がせただろう。
事前に知っていたのなら、元々バッテリーメーカーであるBYDは、軽自動車に搭載するバッテリーパックだけでなく、軽規格EVの開発をスタートさせていたに違いない。
いかに日本の自動車メーカーとは開発のスピード感が違うといっても、おそらくは昨年後半には軽規格EVの構想が持ち上がり、開発がスタートしていたのだろう。バッテリーパックを展示したということは、少なくとも試作の台車(シャーシのみの実走試験車)やスタイリングの検討は進められていたはずである。
報道によると、BYDが開発しているのは、日本の軽規格に収まる車高が高めのEVで、いわゆるスーパーハイトワゴンと呼ばれるジャンルのクルマらしい。この点については、目の付け所が良い。
ホンダの「N-VAN e:」のように、軽貨物ジャンルに挑んでも、大きなメリットは見込めない。ある程度の価格を維持しながら、充実した装備と十分な航続距離を実現することで、ユーザーへの訴求力は高まるからだ。
しかしBYDに限ったことではないのだが、中国の自動車メーカーは日本市場での販売における致命的な問題点に気付いていない。その問題点を問題と認識していない(もしくは解決の優先順位が低い)から、日本での成功は難しいと思うのだ。
では、その致命的な問題点を詳しく見ていこう。
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