「国産VS.アジアン」選ぶ理由が変わった タイヤ市場の二極化とメーカーの打ち手:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
クルマを支えているタイヤ。実績のある国産タイヤメーカーのほか、近年はアジアンタイヤも広まっている。安さと安心でユーザーの選択は二極化している。ブリヂストンやダンロップなどは、時代の変化に合わせてどのように技術や戦略を進化させているのか。
革新的なタイヤ技術で差別化を図るダンロップ
タイヤ内側にスポンジを貼ることでロードノイズを低減させるなど、独自技術にも特長のあるメーカーが、ダンロップを展開する住友ゴム工業だ。日本最古のタイヤメーカーという伝統や実績もあり、ファンも多い。
そのダンロップは昨年、画期的なタイヤ技術「アクティブトレッド」を採用したオールシーズンタイヤを発売し、話題を集めた。
めったに雪が降らない地域では、スタッドレスタイヤに履き替える必要性を感じにくい。そのため、天気予報で大雪などが報じられると、慌ててスタッドレスタイヤの確保に動いたり、夏タイヤのまま走って立ち往生したりするドライバーも続出する。ダンロップはそんなスタッドレスへの交換をためらうユーザーに最適解を提案したのだ。
それが気象条件によって特性を変化させるタイヤなのである。アクティブトレッドでは、気温が低下しても硬化しにくいゴムを採用し、さらに表面に水分が付着するとゴム分子の結合が一部分離してゴムを柔らかくすることでウエット性能を高める。
この仕組みをオールシーズンタイヤと組み合わせて商品化したのが「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」である。従来のスタッドレスタイヤに匹敵する氷雪性能と夏タイヤ並みのドライ性能を併せ持つ、画期的な1本として市場に投入した。
価格は従来のオールシーズンタイヤよりも割高だが、氷雪性能が大幅に向上しているため、スタッドレスタイヤを別に用意するより場所も手間も必要ない、と人気を呼んでいる。筆者もMPV1台に装着しているが、しなやかで乗り心地がよく、静粛性が高いのに驚いた。
ダンロップはこのアクティブトレッド技術を他のタイヤにも応用する方針のようである。今後の展開も楽しみだ。
シンクロウェザーのタイヤ性能を夏タイヤ、スタッドレスと比較したグラフ。氷雪性能などはわずかにスタッドレスの方が上回る(それも最新のスタッドレスではない)が、ほぼ全域をカバーしている(出典:住友ゴム工業)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力
SUVやミニバンと比べて、セダンの人気は衰退している。目新しさが魅力だったSUVも走行性能などが高められたことに加え、ドライバーの意識も変わっている。スポーツカーも衰退しているが、所有して運転する楽しさを追求できるクルマも必要だ。
なぜクルマのコーティングが人気なのか ユーザー心理を利用する術
カーディテイリングビジネスが活況だ。日本では1980年代から徐々に市場が拡大。コーティング技術や洗車機の性能も向上し、安心できるサービスになっている。需要に応じて形を変えながら、さらに発展していきそうだ。
自動運転は「レベル2」で十分である理由 完全自動運転も“完璧”ではない
中国メーカーの高性能EVで自動運転システムによる死亡事故が発生するなど、高度なシステムでも故障や事故は起こり得る。乗用車であればレベル2の運転支援システムで十分便利だ。ドライバーが運転を管理する方が、安全で確実なシステムになるだろう。


