なぜ日本の会社員は「学ばない」のか 個人を責める前に企業が見直すべき組織作りのキホン:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
米国でCareer Cushioning=企業に勤める人たちが「万が一の解雇」に備え、スムーズに転職できるように勉強すること、が流行しています。一方、日本人の多くは学んでいません。日本人が学ばない背景には、組織の問題が潜んでいるのです。
リスキリングは「経営戦略」があってこそ
「え? でも企業はリスキリングに力を入れているのでは?」との意見も聞こえてきそうですが、本来「Reskilling=学び直し・自己啓発」ではありません。単なる学習の手段ではなく、経営者のちゃんとした「経営戦略」があって初めて意味を持つ教育です。具体的には、技能だけでなく、適応力、コミュニケーション能力、さまざまな企業や人たちと協働する能力、新しい仕事を創造する能力の強化などで、「我が社の一員であるメンバーへの投資」といえます。
リスキリングはもともと、ILO(国際労働機関)の「仕事の未来世界委員会」が2019年に公表した報告書で、「現在のスキルは、未来の雇用とマッチしないだろう。また、新たに獲得されるスキルも、迅速に陳腐化する恐れがある」と指摘したことで、世界に広まりました。ILOは同年6月の第108回総会で「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を採択し、政府や企業などが働く人たちの職業訓練に投資することを加盟国に呼びかけました。
また、2013年に英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが発表した論文「雇用の未来ーコンピューター化によって仕事は失われるのか」で、「20年後までに人類の仕事の約50%が人工知能ないしは機械によって代替され消滅する」と予測され、欧米の企業の関心が高まりました。
2019年7月に米Amazonが7億ドルを投じて10万人のリスキリングに乗り出し、2021年5月には、77人の従業員が「アマゾン・テクニカル・アカデミー」を卒業。倉庫作業員などが9カ月間の専門プログラムを受講し、ソフト開発に必要なスキルを身に付けたとされています。
最も先駆的かつ野心的にリスキリングに取り組んできた米国の通信企業AT&Tでは、2013年に10億ドルを投じて10万人のリスキリングを行う「ワークフォース2020」をスタート。同社の公式Webサイトには投資額や受講者の状況、さらには今後の事業計画も具体的に示されています。「企業が求める人材」を「今いる社員」に投資することで実現し、社内異動することで企業を活性化しているのです。
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