なぜ日本の会社員は「学ばない」のか 個人を責める前に企業が見直すべき組織作りのキホン:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
米国でCareer Cushioning=企業に勤める人たちが「万が一の解雇」に備え、スムーズに転職できるように勉強すること、が流行しています。一方、日本人の多くは学んでいません。日本人が学ばない背景には、組織の問題が潜んでいるのです。
「報われない社会」になってしまった日本
かたや日本で行われているリスキリングはどうでしょうか? 企業はそこまで腹をくくっているのでしょうか?
もちろん日本企業でも、企業戦略としてのリスキリングを展開している企業あります。
2021年にはキヤノンが医療関連への配置転換などを通じ、成長につなげることを目的に工場従業員を含む1500人にクラウドや人工知能(AI)の研修を実施。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)もグループ従業員5万人にデジタル教育を推進しました。日立製作所やサントリーなども企業戦略として取り組んできました(日本経済新聞 2021年7月7日より引用)。
つまり、企業側が本気で「我が社の社員に投資する」からこそ、社員も「がんばって学ぼう」と前向きになる。トップが「人の可能性」を信じてこそ、働く人も「会社のためにがんばろう!」と会社を信頼します。このような信頼の好循環が生まれるには、「仕事は人生を豊かにする成長の場」という共通理解が不可欠です。米国でCareer Cushioningが流行っているのも、「仕事は人生を豊かにする成長の場」ということが当たり前の価値観として根付いているからです。それは言い換えれば「報われる社会」です。
一方、日本は「報われない社会」になってしまいました。賃金は20年以上あがらず、やっと上がったと思ったら物価高で実質賃金は全く増えません。
最悪なのは、主体的に「会社の外」で、「自分のお金」で学んだ社員を、会社側が評価するどころか厄介もの扱いするケースです。
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