「舌打ち」「無視」が若手を追い込む 中高年が知らぬ間に加害者になる「グレーゾーンハラスメント」の怖さ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
ハラスメントとまではいえないが不快感や戸惑いを覚える言動を指す「グレーゾーンハラスメント」に関するアンケート結果が公表されました。今回は調査結果からあれこれ考えてみようと思います。
コミュニケーションが持つ不条理さ
さて、いかがでしょうか。
なぜ、加害者の対象を「10歳以上歳が離れた人」に制限しているのか? との疑問はありますが、グレーゾーンではなく、ハラスメントに相当するものもいくつかあります。
ハラスメント防止法では、
(1)優越的な関係を背景とした言動であって、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
(3)労働者の就業環境が害されるものであり、
(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものをハラスメントと定義。
つまり、冒頭の調査の「無視されたり仲間外れにされた」「業務時間外のプライベートな付き合いへの参加を強制された」「社外の飲み会や接待への参加を強制された」などは、上記の条件を満たす可能性が極めて高いといえます。
この数年でハラスメント対策はかなり進められましたが、上司のハラスメントに命を削りながら働かされている社員は後を絶ちません。同僚がハラスメントされているのを見ながら何もしない、動いても無駄と見て見ぬふりをする傍観者はいまだにいます。
このような状況を鑑みれば、「グレーゾーンハラスメント」などと曖昧(あいまい)にするのではなく、ハラスメントとして取り上げるべきでしょう。
一方で、「これもグレーゾーン?」の事案については、コミュニケーションにおいてはよくあることです。
そもそもコミュニケーションは「言葉のキャッチボール」といわれるように、相手=受け手が全てです。コミュニケーションで悩むのは「アクションを起こす側=ボールを投げる側」なのに、「アクションを起こされている側=ボールを受け取る側」に言葉の意味を決める決定権があります。いかにも不条理で、コミュニケーションが永遠のテーマになり得るわけです。
「10歳以上歳が離れた人」といえども相手は自分と同じ「人」です。不機嫌になることだってあるし、言わなくていい一言をポロリと言ってしまうことだってある。ちょっとだけ自慢したくなることもあるし、言いたいことがうまく伝わらず、相手を不愉快にしてしまう場合だってあります。
もちろん、どんなに相手=ボールをなげる側に悪気がなくても、嫌なことは嫌だし、その「嫌」の一つ一つはたわいもないものでも、毎日のように「嫌」を感じているとミシミシと心がきしみ、疲弊し、やる気はおろか生きる力まで奪われる場合もある。それでもやはり、たまたま相手が投げたボールがグレーゾーンに見えた場合は、「とりあえずスルーする」というスキルも習得した方がいいと思うのです。
片や「自分には悪気がない」のに、ボールをキャッチした若い社員がストレスを感じているとしたら、それほど悲しいことがありません。ですので、そういったすれ違いが起こらない職場を、企業側が徹底して作ることが求められています。
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