部下のコンプレックスを「悪化させる」上司の一言5選 劣等感を強みに変えるには?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/4 ページ)
上司としては善意による発言でも、部下のコンプレックスを強く刺激してしまうことがある。そんな上司の「最悪の発言」を5つ紹介するとともに、取るべき行動を紹介したい。
部下のコンプレックスを悪化させる5つの言葉
私が現場で見てきた、部下のコンプレックスを刺激する「最悪な一言」を5つ紹介したい。
(1)「君は学歴がないから、もっと努力しないと」
学歴への言及は、最も避けるべき発言の一つだ。たとえ励ますつもりでも、学歴コンプレックスを持つ部下には逆効果である。
私自身も大学を出ていないため、「やはり学歴がないとダメなのか」と、何度も絶望したことがある。
「君の同期のAさんはすごい。さすが○○大学を卒業しただけあるな」
こうした発言も、気を付けるべきだ。出身大学と仕事の成果を関連付けるべきではなく、Aさんの努力自体に目を向けないと、傷つく人もいるからだ。
(2)「背が低いんだから、もっと背伸びして頑張らないと」
外見に関するコメントは、どのような文脈でもNGだ。私は以前、「君の笑顔は、何だか貧相だな」と指摘している上司に出くわしたことがあるが、言葉は選ぶべきだ。
外見に関する発言は、人の心に強い影響を与えるものである。上司の不用意な発言によって、部下は「やはり見た目が悪いのだ」と受け止め、深く傷つくことになるだろう。
(3)「裕福じゃないなら、もっとハングリー精神を持てよ」
経済的な背景への言及も避けるべきである。
貧しかった頃の経験を、「強み」として捉えさせるような発言は、相手の劣等感を刺激する。私自身が貧乏な家庭に育ったため、敏感に反応してしまう理由は痛いほどよく分かる。
「どうして大学へ行かなかったんだ? 家にお金がなかったからか? それなら、同期よりも頑張るべきだろ」
「しっかり稼いで、ご両親を楽にしてあげないとな」
上司は善意のつもりで発言したのであろうが、私はやるせなさを感じた。貧乏を美化するような発言に、不快感を覚える人は少なくないのである。
(4)「君は話すのが下手だから、メールで勝負した方が良いな」
性格や能力を決めつける発言も禁物である。
「あいつはコミュニケーションスキルが低い」
「初対面の人と話すのが苦手なタイプだ」
そうしたレッテルを貼ると、部下の可能性を狭めてしまう。本人がその課題克服に努めている最中であれば、その意欲をそぎ、心を折ってしまうだろう。
(5)「前の会社は小さかったから、うちのやり方に慣れるのは大変だよね」
過去の経歴を見下すような発言もするべきではない。前職を「小さな会社」「有名ではない会社」「イマイチな会社」などと表現することで、相手のキャリアを否定することになる。
たとえ部下本人が、「前の会社は本当にイマイチでした」と言っている場合でも、内心では悲しんでいる可能性がある。昔の仲間が今も真剣に働いているのであれば、なおさらその悲しみは強くなるだろう。
これらの発言に共通するのは、相手の弱みを指摘しながら励まそうとする姿勢である。上司としては善意のつもりでも、部下には「やはり自分はダメなのだ」というメッセージとして伝わってしまう。コンプレックスを抱える人にとって、それを指摘されることは何より辛いことなのである。
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