2015年7月27日以前の記事
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日本企業の財産をどう守るのか スパイ防止の対策と限界世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

7月の参議院選挙以降、スパイ防止法の議論が話題になっている。日本も防諜機関の活動や法整備によって対策を進めているが、企業の情報が盗まれる事例は多い。スパイ対策を効果的に進めるため、海外の法律なども参考になるだろう。

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スパイ活動を監視する防諜組織とは

 日本は、海外からのスパイを監視する防諜(スパイ対策)組織の能力は低くない。日本の防諜機関には、公安警察、法務省の外局である公安調査庁、防衛省の情報本部、自衛隊の情報保全隊などがあり、それぞれが懸念国から入国したスパイ活動者を積極的に監視している。テロ活動にも目を光らせている。

 彼らは地道にスパイの動向や活動を調べ、時に潜入なども行いながら、監視している。ただし、スパイ防止法のようなスパイ摘発の法律がないため、活動には限界がある。

 とはいえ、スパイ摘発が不可能というわけではない。これらの情報機関の中でスパイを逮捕できる法執行機関は公安警察だけだが、スパイ防止法がない中でも、外国のスパイが日本企業などから情報を盗んだ場合は、不正競争防止法違反や窃盗罪などで摘発している。


重要な情報を盗んだスパイは摘発されている(画像提供:ゲッティイメージズ)

 現行制度では、「盗む」行為が確認されて事件にならなければ逮捕できず、その時点で情報はすでに相手の手に渡っている。もしスパイ防止法があれば、捜査権限が広がり、情報を得るための「そそのかす行為」も摘発できるようになり、スパイ工作を未然に防げる可能性がある。

 また現時点では、政治家などへの工作に対してはできることが限られている。少し前にも、国会議員の秘書が中国警察機関の関係者だったと発覚した。中国の中央統一戦線工作部などの情報機関関係者と接触している政治家や、中国共産党とのつながりを指摘される人が経営する会社の顧問弁護士をしてきた現役政治家もいる。

 そうしたケースで仮に日本の政治に影響を与える意図があったとしても、食い止めることは難しい。オーストラリアなど欧米諸国では、こうした影響工作が「サイレント・インベージョン(静かな侵略)」などと呼ばれて警戒されてきた。

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