セールの魅力はまだある? 「春が飛んだ、秋も飛んだ」アパレル事情:アパレルビジネス(2/4 ページ)
春物や秋物の販売時期が気候変動で短縮され、「春が飛んだ」「秋も飛んだ」と呼ばれる現象が広がっている。アパレル業界では在庫やセールの在り方を見直し、プロパー販売やアップサイクルで対応している現状を解説する。
さて元々セールは、どうしても期末に余ってしまう鮮度の落ちた在庫(死に在庫)を処分するために、「お客様への感謝という意味も込めて」などの美辞麗句を並べつつ始められたものですが、もともとプロパー(上代)では買えない客にとって、セールは待ちに待った一大イベントだった時期もありました。
例えば、早めにセールを始める他の商業施設より1カ月も遅れて開催するラフォーレ原宿やパルコの「グランバザール」には、たくさんの消費者が詰め掛けました。一方で11月末や6月末から始める比較的テナント構成が同質化した施設では、セールそのものの魅力が落ちてきているのが現状です。
どこへ行っても同じ物があるから魅力も失せて、あえてセールでも買う気にならず、さらには、ECで同じものが早めにセールされているケースもしばしばだからです。まずもって商品の希少性やブランド力がない限りは、セールに対する消費者の「前のめり感」はなくなってしまったようです。
さらには2020年春のコロナ禍で春物在庫の処分に苦労したアパレルメーカー各社は、それ以降あまり在庫を積まないようにしてきました。
いつ何時またパンデミックが襲ってくるかも分からずというのもあるのですが、それ以上にSDGsの浸透とも軌を一にする動きでもあり、できるだけ需要予測を強化し、過剰在庫を避けてきた結果、セールの玉(商品)自体が少なく、その時期に販売すべきプロパー商品や期中企画を店頭に投入するようになってきたこともセール自体の弱体化へとつながっています。
近年は、商業施設側もSDGsを意識して、セールの打ち出しよりも、別の季節性のある切り口やテーマを掲げて、その時期の目玉にしていこうという気運になっています。
商業施設や百貨店などのテナントは別にして、直営路面店や小さなセレクトショップなどでは、すでにセールを取り止めている店も出てきています。一定の売れ残りは避けられないので、全くセールがなくなるということはありませんが、ブランドの関係者のみに行うファミリーセールや死に在庫をリメイクの材料として使い、新たな商品に生まれ変わらせるアップサイクルという取り組みで無駄を減らす努力を行っているメーカーもあります。
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