出社は“信仰”? 若手が始めた「コーヒーバッジング」という抵抗:「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/4 ページ)
成果を出しても「顔が見えない」と信用されない。米国で広がる“コーヒーバッジング”は、若手社員の静かな抗議だ。出社回帰の圧力に揺れる組織で、管理者が直視すべき本質とは何か。
「静かな反抗」が示すもの
コーヒーバッジングは、単なる反抗ではない。若者なりの意思表示だ。彼らが伝えたいメッセージは明確である。
- 公正に評価してほしい
- 多様な働き方を認めてほしい
- 形式的なルールではなく、本質を重視してほしい
前述の6人も、最初から反抗的だったわけではない。何度も管理者と話し合いを重ね、在宅ワークの効果を数字で示した。それでも聞き入れられなかったため、最後の手段としてコーヒーバッジングを選択した。
これらの行動は、組織運営の根本的な問題を浮き彫りにしている。信頼関係の欠如、コミュニケーション不足、デジタル化の遅れなど、課題は山積みである。
管理者が変わるべき3つのポイント
では、管理者はどう変わるべきか。重要なポイントは3つだろう。
評価基準の明確化
まず、何で評価するかを明確にすることだ。出社回数ではなく、売上、品質、顧客満足度など、成果に直結する指標を重視すべきである。
曖昧な基準では、部下も何を頑張ればいいか分からない。「とにかく出社して頑張れ」では、モチベーションは上がらないのだ。
オフィスワークの価値を言語化
次に、なぜオフィスワークが必要なのかを論理的に説明することだ。チームワーク向上、知識共有の促進、メンタルサポートなど、組織全体を考えたうえでの決定事項だと伝えることだ。個人のメリットばかりに焦点を合わせると、「私にはメリットがない」と反論されてしまう。
柔軟な管理体制の構築
最も重要なのは、組織全体と個別の事情を配慮しながら柔軟性をもってマネジメントすることだ。毎日のように出社させるのではなく、業務内容や個人の状況に応じて働き方を調整する柔軟な対応が不可欠だ。
在宅ワークでも生産性の高い働きをしている人を認め、公正に評価することも欠かせない。画一的なルールではなく、個別最適化された管理が求められているのである。
コーヒーバッジングという現象は、私たちに重要な問いを投げかけているのかもしれない。「組織運営に必要なことは何か?」「働き方の本質とは何か?」。この問いに真摯(しんし)に向き合い、答えを提示できる組織だけが、次の時代を生き抜けるのだ。
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