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上司が部下に「ワークライフバランスを捨てろ」と言ってはいけないワケ:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
高市新総裁の「ワークライフバランスを捨てる」発言が話題になった。しかし曲解した上司がマネしてはいけないことがある。
そもそも「ワークライフバランス」とは何か?
今では全く珍しくなくなったこのフレーズ――ワークライフバランス。そもそも、どういう意味なのか?
ワークライフバランスとは文字通り「仕事と生活との調和」を意味する。
政府が策定した「仕事と生活の調和」憲章では、「国民一人一人がやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」を目指すと定義している。
つまり、仕事だけに人生を捧げるのではない。家庭や趣味、自己研さんなど、生活全体のバランスを考えることが重要だ、ということだ。
これは昭和時代の反省から生まれた概念といえよう。“モーレツ社員”として働き続けた結果、家庭崩壊や過労死、メンタル不調など、深刻な社会問題が頻発した。その教訓から、働き方を見直す必要性が叫ばれたのだ。
しかし勘違いしてはならない。ワークライフバランスは「仕事と生活」の配分を「5:5」にする、という意味ではない。限られたリソースをどう配分するか。その人の生活、仕事、状況において、バランスをとっていきましょうという考え方だ。それこそがマネジメントの本質である。
仕事に7割、生活に3割。あるいは5対5。もしくは2対8――。その配分は個人の状況によって変わるはずだ。子育て中の社員、家族を介護する社員、自己研さんに励む若手社員。成長したい人はモーレツに汗をかくことが必要なときもある。それぞれが最適なバランスを見つけることが大切なのだ。
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