水没車はどんな末路をたどる? 自然災害の増加で自動車ビジネスはどう変わるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
水没車のほとんどは廃車となるが、その後もさまざまな形で活用される。特に海外では、日本で使われなくなった車両や部品も驚くほど有効利用されている。日本でも、リサイクルまで考慮した工夫やシステム構築をさらに進めるべきだろう。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
今年の夏も暑かっただけでなく、豪雨災害に見舞われた。これは日本だけでなく世界中のあちこちで起きており、雨が少ない地域との格差は広がっている。気候変動の影響で水害が多発している印象だ。
水害が起こると、クルマの分野では水没車という被害が生じる。文字通り水に没した(浸かった)クルマである。
水没車のほとんどが廃車処分されることは、ドライバーなら知っている人も多いと思う。水没の状況次第とはいえ、ホイールの半分まで水に浸かったら、ほぼその車両は使用不能になるといわれている。
水没車両が使用不能になる原因はいろいろある。エンジンの吸気系から水を吸い込み、ウォーターハンマー現象によってエンジンが破壊されてしまう。もしくはオイルシールやブリーザーから水が入り、エンジンや駆動系に回って潤滑不良を起こし焼き付く。
電装系の深部まで浸水すると、接触不良や短絡を起こす。EVやハイブリッド車は、短絡により車両火災を招くケースもあるため、水没車は危険物にもなりうる。
内装まで浸水すると、雑菌の繁殖により、悪臭やカビ、サビの発生を招いてしまうことも多い。ザッと挙げただけで水没車はこれだけのダメージを負ってしまう可能性があるのだ。
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