水没車はどんな末路をたどる? 自然災害の増加で自動車ビジネスはどう変わるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
水没車のほとんどは廃車となるが、その後もさまざまな形で活用される。特に海外では、日本で使われなくなった車両や部品も驚くほど有効利用されている。日本でも、リサイクルまで考慮した工夫やシステム構築をさらに進めるべきだろう。
廃車となったクルマはどうなるのか
オフロード性能の高いクルマであれば、水没してもダメージは少ない。車内の汚れなども洗浄によって除去できる場合がある。そもそも河川やぬかるみなどを走行しているユーザーにとっては、水没してもエンジンや電装系にダメージが及ばなければ、掃除して乗り続けることも少なくないだろう。
また、非常に価値の高いクルマ(希少性の高いクルマなど)は、どんなに手間をかけても修復することが多い。
しかし前述の通り、ほとんどのクルマは水没すると廃車処分となる。それは自動車保険で車両保険に加入しているかはあまり関係ない。
ちなみに車両保険でも、水没車の扱いはいろいろと複雑だ。天災による被害は補償の対象外となるケースも多い。ただし、地震による津波は保険金支払いの対象となることもある。このあたりは保険会社や商品によって対応が異なる。各社はこうした補償内容の違いで差別化を図り、価格競争を避けているのだ。
交通事故によって損傷を受けたクルマも廃車処分となるケースが多い。最近のクルマは衝突安全性を高めるために、車体が大きくつぶれて衝撃を吸収する構造になっている。そのため車体全体にダメージが及ぶため、以前より廃車となる確率は高い(写真:Adobe Stock)
廃車後のクルマはどういう運命をたどるのか。廃車=つぶされてスクラップ鉄になるだけ、ではない。そこにはさまざまな活用法があり、廃車ビジネスは年々拡大を続けている。水没車もそのまま中古車で販売されることはほとんどないが、さまざまな形で利用されているのだ。
ちなみにクルマは、スクラップ処分となっても車体の95%はリサイクルされる、資源リサイクルの優等生である。鉄などの金属はもちろん、ガラスやプラスチックも回収されている。
ドイツ車などは、2000年頃から積極的にリサイクル素材を部品の原料などに用いてきた。しかし、想定よりリサイクル樹脂の劣化が早く進み、ワイヤーハーネスの被覆がはがれるなどのトラブルが起きたため、リサイクル素材の改良と採用範囲の最適化が進められた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
なぜ軽自動車は選ばれるのか 「軽トラック」がじわじわ広がっている理由
税制優遇があり、装備も充実してきた軽自動車。そもそも国民車構想から誕生したが、安全性や快適性を高めて進化していった。スズキやホンダが高品質な商品をヒットさせた影響も大きい。軽トラックなどは海外でも評価されており、今後も需要が拡大するだろう。
スズキが目指す“100キロ軽量化”の衝撃 クルマは軽ければ軽いほどいいのか
自動車メーカーは、軽量化の技術開発に注力してきた。スズキは「100キロの軽量化」を掲げ、開発を進めている。一方、クルマの性能を高めるため、重量増となる改良を行うケースもある。軽く、強く、安全なクルマを作るための挑戦が続けられていくだろう。
スマホの「ながら運転」をどうやめさせるか カーナビの功罪とメーカーの対策
運転中のスマホなどの使用による死亡・重傷事故は増加しており、問題になっている。ながら運転をさせないために、ドライバー監視システムなどを普及させるとともに、運転中にスマホを使えなくすることも検討すべきだ。官民で対策を強化しなければならない。