あなたの「正しい提案」が会議を通らないワケ 社内を支配する“根回し”の技術:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)
根回しを軽視する人は、「正しい提案なら会議で通るはずだ」と考えている。しかし現実はそう甘くない。
ステークホルダーは会議に参加するとは限らない
根回しで見落としがちなのが、会議に参加しないステークホルダーの存在だ。
会議のメンバー表を見て、「この人たちに説明すればいい」と考えるのは早計である。意思決定に影響を与える人は、必ずしも会議に出席するとは限らない。
例えば営業部門の新しい取り組みを提案する場合、現場の営業パーソンは会議に出席しないことが多い。しかし実際に施策を実行するのは彼らだ。
「私たちは何も聞いていませんよ。そうやって私たちの知らないところで意思決定するの、やめてください」
「いつも事後報告ですよね。私たちの意見なんて、どうだっていいんですか?」
正しければいい、というわけではない。大事なことは信頼関係だ。現場の協力が得られなければ、どんなに素晴らしい施策も絵に描いた餅になる。
また、会議には出席しないが強い影響力を持つ人物もいる。例えば、経営陣の相談役や、特定分野の専門家などだ。こうした人物に事前に相談しておかないと、会議後に「専務には確認したか?」と言われることがある。
「こういうことは、まず専務に伝えておくべきだ。ダンドリが悪すぎる!」
「専務が機嫌を損ねたら、社長でも何ともならん!」
ステークホルダーを正しく把握するには、次の3つの視点で整理するといい。
- 最終的に判断を下す人
- 意思決定に影響を与える人
- 実際に施策を実行する人
この3つの視点で関係者をリストアップし、それぞれに適切な根回しをする。最終的に意思決定する人には丁寧に説明し、影響を与える人には事前に意見を求める。そして現場の声もしっかり聞く。こうすることで、抜け漏れのない根回しができるのだ。
俯瞰力を身につけよう!
根回しを成功させるには、俯瞰力が欠かせない。俯瞰力とは、物事を高い視点から全体的に見渡す力のことだ。
自分の提案が組織全体にどのような影響を与えるのか。どの部門が関係するのか。誰の利害が絡むのか。こうしたことを俯瞰的に捉えられなければ、適切な根回しはできない。
俯瞰力を身につけるには、組織図を頭に入れることだ。自分の部署だけでなく、他部署の役割や責任範囲も理解する。そうすることで、誰に根回しすべきか見えてくる。
また、過去の事例を研究することも有効だ。同様の提案が過去にどのように進められたのか。誰が反対したのか。どのように合意形成されたのか。先輩や上司に聞いてみるといい。特有の「組織力学」が理解できるはずだ。
さらに、日頃から他部署との関係構築も大事。困ったときだけ相談するのではなく、普段から情報交換しておく。そうすれば、いざ根回しが必要になったときに、スムーズに相談できる。
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