盛り上がるM&A、その活況の裏に潜む「落とし穴」:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
M&Aが活況を呈している。企業の後継者不足に加え、積極的な成長戦略として活用されるようになったからだ。一方で「落とし穴」もある。あやしい仲介業者にだまされたり、外国勢力に技術などを奪われたりしないように、リスクをしっかり調査する必要がある。
活況を呈するM&Aの「落とし穴」とは
かつては「乗っ取り」といった負のイメージが強かったが、いまや「友好的な事業引き継ぎ」として社会的に受け入れられるようになったことも、M&A増加の別の理由として挙げられる。
M&Aの仲介業者が増加しているし、中小企業庁も「事業承継・引継ぎ支援センター」を全国に整備するようになった。だが、同センターはあくまで「相談」できる公共サービスに過ぎず、M&Aの煩雑で専門的な契約実務をやってくれるわけではない。それならば、すべてをやってくれる仲介業者に頼んだ方が手っ取り早い、と考える人もいる。その考えも分からなくはない。
ただ、そこには落とし穴がある。仲介業者の中には、資格も免許もない、あやしい会社なども存在している。
例えば、後継者のいない中小企業のM&Aのマッチングなどを手掛ける、ある東京都の投資会社は、売却を希望する企業から資金管理の名目で現金をだまし取ったり、買収の手続きを進める中で現金を引き出してトンズラしたりしていたため、警察が捜査している。
こうした問題が出てくる理由は、M&Aの相手企業だけでなく、仲介業者の信用情報をきちんと審査していないからだ。
米国発の調査会社で、企業インテリジェンスを専門にするクロール(Kroll)の日本支社長、山﨑卓馬氏は「世界のグローバル企業は、ビジネスで深く関わる関係各所の会社状況や評判、内部環境について、企業インテリジェンスのサービスを使って徹底的に調査する。M&Aなどを安全に進めるために、つまり、自社を守るために動いている」と話す。
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