仕事のやらされ感、「年収・学歴」より幸福度に直結 “転職せず”に環境を変える方法とは(2/3 ページ)
従業員エンゲージメントの停滞を打破する鍵として、仕事の境界や意味を自ら再設計する「ジョブ・クラフティング」が注目されている。その方法と、実現に不可欠な条件とは。
「やらされ感」から抜け出し、仕事に価値を見いだすこと
エンゲージメント停滞の背景には、従業員が自分の仕事を「つまらない、やらされているだけ」と感じる現状がある。池田氏は、この“やらされ感”からの脱却が鍵だと指摘する。
心理学では、人間は報酬よりも「価値の実感」や「仕事そのものの楽しさ」によってモチベーションや幸福感が高まるという研究がある。また、人材紹介会社パーソルホールディングスの調査によると「仕事を自分で決められている」人は、仕事の満足度が高いという傾向が確認されている。
この考え方を象徴するのが「3人のレンガ職人」の逸話である。これは、大聖堂を建設している3人の職人に何をしているのか聞いたところ、1人目は「見れば分かるように、ただレンガを積んでいるだけだ」と答え、2人目は「家族を養うためにレンガを積んでいる」と答え、3人目だけが「歴史に残る偉大な大聖堂を建てている」と語ったという。
これは、同じ作業でも「仕事にどんな意味を見いだすか」によって、やりがいや動機づけが大きく変わることを示す寓話として知られている。
池田氏は、この逸話を引用し「目の前のレンガ積みに『最高に意味があり楽しい』と感じる人ほど、エンゲージメント高く働ける」と説明する。
仕事を「再定義」するジョブ・クラフティング
ジョブ・クラフティングとは、従業員が自らの業務範囲や関係性を再設計し、やりがいや楽しさを高めるアプローチである。池田氏は、その主な次元を3つに分類する。
タスク次元ジョブ・クラフティング
タスク次元ジョブ・クラフティングは「仕事の内容」や「やり方」を自分好みに変えることだ。
例えば、出版社の編集者が上司に任された本の編集の仕事をするだけでなく、「未来のベストセラー作家」を発掘するために新人コンテストを企画することなどが挙げられる。
人間関係次元ジョブ・クラフティング
人間関係次元ジョブ・クラフティングでは、「誰と」「どのように関わるか」を再設計する。
例えばアパレル販売員が「服を売る」だけでなく「お客のファッションの悩み相談に乗ること」に価値を見いだし、仕事に取り入れることがあてはまる。
認知次元ジョブ・クラフティング
認知次元ジョブ・クラフティングとは、仕事の捉え方や意味付けを変える取り組みだ。例えば製薬企業の経理担当者が、一見単調に思える自分の作業も「患者の幸せにつながる」と認識し、価値を再定義することなどがこれに相当する。
池田氏は上記に加え、疲弊してしまった従業員には「縮小的ジョブ・クラフティング」も有効だと話す。これは、重要だが必須ではないタスクや、ストレスを与える人間関係を最小限に抑える工夫である。必要な会議だけに参加する、苦手な人との接触を減らすなどが例として挙げられる。
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