コラム
「アサヒとキリン」どこで差がついたのか? 数字が語る両社の選択:サイバー攻撃の影響(2/6 ページ)
アサヒとキリンは、どこで差がついたのか? 財務や事業戦略の数字から成長の分かれ目を分析。海外展開や多角化、国内ブランド戦略の違いから、今後の競争の行方を読み解く。
決算書が示す、圧倒的な利益率の差
両社の財務諸表を比較すると、アサヒとキリンの差は一目瞭然です。特にアサヒは、積極的な海外展開が業績を引っ張っており、ここ数年は売上高・営業利益ともにキリンを上回っています。
中でも顕著なのが、営業利益率の安定性です。アサヒはほぼ常に8%以上の営業利益率を維持しているのに対し、キリンは年度ごとの変動が大きく、業績のボラティリティ(変動幅)が高い傾向にあります。
この理由は、セグメント別利益率に目を向けると見えてきます。
キリンはセグメントごとの利益率では比較的安定しており、数字そのものは決して悪くありません。ところが、それを連結営業利益率に換算すると大きな差が生じます。
キリンは2019年から、医薬やヘルスケアにおけるグループ横断的な研究開発、買収、構造改革を行い、その費用を本社に計上していると考えられます。その結果、個別セグメントでは利益が出ていても、連結ベースでは営業利益率が押し下げられてしまっているのです。
一方でアサヒは、セグメント利益率と営業利益率の間にほとんど差がなく、グラフにすると2本の線がほぼ重なっています。これはアサヒが世界の各地域別に事業を展開し、各セグメントで損益をきちんと管理しているのが理由です。親子会社間で発生する償却も少なく、利益を大きく押し下げる要因にはなっていません。
実は両社のこの数値差には、「全体をいかに見える化し、管理できているか」という経営の巧拙(こうせつ)が表れています。
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