「アサヒとキリン」どこで差がついたのか? 数字が語る両社の選択:サイバー攻撃の影響(3/6 ページ)
アサヒとキリンは、どこで差がついたのか? 財務や事業戦略の数字から成長の分かれ目を分析。海外展開や多角化、国内ブランド戦略の違いから、今後の競争の行方を読み解く。
グローバル展開のアサヒVS. 多角化のキリン
もともと両社は、日本国内のビール市場の成熟化という共通の課題に直面していましたが、その打開策として採用した成長戦略は対照的でした。
キリンは、事業の多角化とリスク分散を重視する道を選びました。自社の発酵技術を応用し、協和発酵キリン(現在の協和キリン)を設立して医薬品事業に参入。さらに、サプリメントなどを含むヘルスサイエンス事業を展開し、酒類企業から「健康」を軸とした企業への転換を図っています。
この背景には、キリンの海外における買収の失敗があります。酒類かつ海外という軸で成果を上げられなかった経験から、自社の強みや可能性のある分野としてヘルスケアを選び、将来的な海外展開も視野に入れて再構築を進めているのです。
一方、アサヒはアルコール飲料事業に集中し、それを武器にグローバル市場へと展開していく戦略を採用しました。国内で培ったビール事業の強みを生かし、世界市場での拡大に経営資源を集中させています。
この戦略の違いは、M&Aへの姿勢にも明確に表れています。
キリンは海外M&Aの失敗から、現在は規模ではなく、利益率と既存事業との連携を中心とした、低リスク志向の戦略を採用しています。フィリピンのサンミゲルへの出資やオセアニアのライオンネイサンの子会社化は着実に収益をあげてきたものの、海外展開は想定していたほどうまくいかなかったためです。
アサヒはキリンとは対照的で、2011年のオセアニア進出を皮切りに、2016年にペローニなどの欧州のプレミアムビールブランドの買収で成功を収めたほか、東欧でも買収を行い、2019年にはオセアニアで最大手を買収し、圧倒的なシェアの獲得に成功しています。現在では、海外売上高比率が高く、欧州やオセアニアを基盤に事業を展開するグローバル企業へと進化しています。
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