部下「計画をAIに作らせました。チェックしてください」 上司のあなたはどう答える?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)
AIの正しい使い方と間違った使い方について解説する。部下の成長を願うマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
なぜAIは「辛口の評論家」になれるのか?
ここで一つ、重要な問いがある。なぜ人間ではなく、AIに批評させるべきなのか。
答えは明確だ。AIは「クリティカルシンキング」を躊躇(ちゅうちょ)なく実行できるからである。
クリティカルシンキングとは、物事を批判的に検討する思考法だ。前提を疑い、論理の穴を探し、別の視点から問い直す。ビジネスにおいて極めて重要なスキルである。
しかし、人間同士でこれをやるのは難しい。なぜか。3つの理由がある。
人間関係への配慮
上司が部下の企画書を見て、「この論理、おかしくない?」と言ったらどうなるか。部下は傷つくかもしれない。やる気をなくすかもしれない。だから上司は言葉を選ぶ。オブラートに包む。結果として、本当に伝えるべき指摘がぼやけてしまう。
同僚同士でも同じだ。「君の企画、ここがダメだと思う」とは言いにくい。関係が悪くなるのが怖いからだ。
忖度と空気を読む文化
日本の職場では特に顕著だが、「空気を読む」ことが美徳とされる。会議で上司が「この方向で行こう」と言えば、内心では疑問があっても口をつぐむ。「和を乱したくない」という心理が働く。
部下の企画書をチェックするときも同じだ。本人が一生懸命作ったものを、バッサリ斬るのは気が引ける。「まあ、いいんじゃない」と曖昧に済ませてしまう。
自分の立場を守りたい心理
厳しい指摘をすると、「じゃあ、お前ならどうするんだ」と返されるリスクがある。批判だけして代案を出せないと、自分の評価が下がる。だから黙っておこう。そんな心理が働く。
つまり、人間は「クリティカルシンキングをすべきだ」とわかっていても、実行できないのだ。しがらみが多すぎる。
一方、AIはどうか。
AIには人間関係がない。忖度する必要もない。空気を読む文化もない。自分の立場を守りたいという欲求もない。だから、純粋に論理だけを見て、おかしいところを指摘できる。
「この前提は根拠が弱いです」
「ここの論理が飛躍しています」
「競合分析が抜けています」
人間が言ったら角が立つようなことも、AIは平然と言ってのける。しかも、感情的にならない。淡々と、しかし的確に問題点を突いてくる。
さらに言えば、AIは疲れない。人間なら30ページの企画書を渡されて「2分で読んで問題点を指摘して」と言われたら無理だ。集中力が持たない。しかしAIなら一瞬で処理できる。
これがAIを「辛口の評論家」として活用すべき理由だ。人間にはできないクリティカルシンキングを、AIは躊躇なく、高速で実行してくれる。
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