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年会費9万9000円で「買えないものを買う」 どういうこと? 富裕層カードの知られざる世界「ポイント経済圏」定点観測(4/5 ページ)

富裕層向け最上位カード「Visa Infinite」が打ち出すのは、“買えない体験”を商品化する戦略だ。限定イベントや特別サービスを通じ、アクセスそのものに価値を持たせる仕組みを読み解き、ポイント経済圏の新たな潮流を追う。

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悟りの値段

 発表会の終盤、ステージ袖でショパンコンクール入賞のピアニスト・桑原志織が生演奏を披露した。

 モノトーンの会場に、ピアノの音色が響く。グランドボールルームが即席のコンサートホールに変わる。これ自体が、Visa Infiniteの「体験価値」のデモンストレーションなのだろう。出席した記者たちは、会員向けイベントの片鱗を味わったことになる。


ピアニスト・桑原志織が生演奏を披露(出典:三井住友カード)

(筆者撮影)

 会場を出て、大手町の高層ビル群を見上げる。この街には、見上げるしかないものが多い。

 大西社長は質疑応答でこうも言った。「体験価値は、日興証券やSMBCの富裕層のお客さまにもコラボレーションで提供していく」。つまり、三井住友カードだけではない。年間取扱高40兆円を誇る同社の資産を、SMBCグループ全体の富裕層戦略の中核に据えようとしている。

 「買えないものを買う」とは、ものを買うことではない。ネットワークに参加することだ。カード会社が60年かけて築いた人脈、グローバルなスポンサーシップ、金融グループの顧客基盤。その網の目の中に、自分の席を確保する。

 禅の修行僧は、公案に何年も取り組む。答えが出ない。出ないまま座り続ける。ある日、ふと腑(ふ)に落ちる瞬間が来る。言葉にはできない。でも、分かる。それを「悟り」と呼ぶ。

 Visa Infiniteが売っているのは、きっとそういうものだ。

 バカげている、と思う人もいるだろう。それでいい。公案は万人に開かれていない。

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