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タイヤはどこまで進化するのか ダンロップとブリヂストンが示す“次の一手”高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

日本のタイヤメーカーを取り巻く環境は厳しい。安価なアジアンタイヤと差別化できる価値を生み出すため、国内メーカーは品質や技術を高めている。ブリヂストンやダンロップは、革新的な技術によって、これまでにない性能を持った製品を開発している。

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新発想の技術で革新的なオールシーズンタイヤを投入

 住友ゴム工業は先ごろ、最先端の分析施設「ナノテラス」で研究しているゴム分子の解析成果を、施設とともに公開した。

 近年、住友ゴムは水を徹底的に研究している。その過程で生まれたのが「アクティブトレッド」という技術だ。従来、夏タイヤと冬タイヤ、エコタイヤとスポーツタイヤといったように目的別に特性を最適化したゴムを配合して対応していたが、この技術では完成されたタイヤの特性を状況に応じて変化できる。


東京大学物性研究所の原田慈久教授が、住友ゴムと共同研究中のビームラインを解説。原田教授の水についての知見の深さに驚かされるばかりであった(筆者撮影)

 その第1弾となる製品が、2024年に発売されたオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」だ。

 オールシーズンタイヤは1年を通じて変化する気象条件や路面に対応するため、幅広く平均的な性能を確保するのが通例だった。しかしシンクロウェザーは、温度変化に強く、水を検知すると柔らかくなるゴムの開発により、スタッドレスタイヤに近い冬道性能と、従来のタイヤでは実現不可能なウエット性能を両立することに成功した。

 これにより、スタッドレスタイヤを購入してもほとんど出番がなく劣化してしまう地域のユーザーに対してアピールできる。アクティブトレッドの技術はタイヤの目的に合わせて応用できるため、今後の新商品にも大いに期待できそうだ。


アクティブトレッドでは、水スイッチと呼ばれる、水に反応してタイヤが柔らかくなる現象を放射光で可視化することに成功。シリカが水を吸ってゴム内部に水を導くことで、ゴム分子のつながりを切って柔らかくする(画像:住友ゴム)

 世界中で乗用車用タイヤの需要が拡大し、新興国でもタイヤメーカーが乱立している。中国や韓国のメーカーの攻勢も激しさを増していくことが予想される。

 横浜ゴムもトーヨータイヤも、日本メーカーとしての高い品質や環境への配慮など、先端分野に対する投資は積極的だ。一時的に低価格志向が続いても、いずれ「タイヤは安心を買うもの」として、品質とのバランスが自然と重視されるようになるだろう。

 そして、大型分析施設の利用によるゴム分子の詳細な分析は、今後の日本のタイヤメーカーにとって大きな武器になる。分析によるデータに基づいて、精密なゴムの設計や製造ができることが日本の強みであるからだ。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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