「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地:【2025年メガヒット記事】(3/7 ページ)
インバウンド需要が旺盛で、日本の観光業界が盛り上がりを見せています。では、航空会社の業績はどうなっているのでしょうか。JALとANAの決算をベースに分析したところ……。
「選択と集中」ができたANAが徐々に頭角を現す
2000年代初頭、JALはナショナルフラッグキャリア(国を代表する航空会社)として、国際線の路線数や就航都市数も圧倒的に多く、「日本の航空会社といえばJAL」と言われていました。
しかし、このころからすでにANAは収益率向上のため、さまざまな取り組みを行っていました。徐々に普及し始めたインターネットを活用し、法人向けのインターネット出張手配システム「ANA@desk」を構築して、企業の出張手配を効率化しました。また、「超割」などの新たな割引運賃の設定や、インターネットを活用して直販チャネルを確立し、幅広いユーザーの獲得に乗り出していました。
ANAが国際線拡充のための動きを積極的に行っていったのも、実はこの時期からです。ANAは2004年4月に、ボーイング787という中型機の導入を決定しました。それまでは、ボーイング747を代表とするジャンボジェットと呼ばれる機材が主流でした。
しかしジャンボジェットは機体が大きいために空席率が高くなりやすく、燃費が悪いため採算が取りづらいというデメリットがありました。当時ANAが主要空港として使っていた成田空港から、採算性を高めながら国際線を飛ばせるよう、燃費がよく、長距離の飛行にも最適な中型機を導入することはかなり理にかなった選択だったと感じます。
また、ボーイング787の購入資金を調達するため、グループ会社であり、かつ収益性も高かった全日空ホテルなどを、2008年のリーマンショックが始まる前に売却できたのも大きかったでしょう。
一方で、JALはパッケージ旅行の販売やホテル事業など、採算性が低い事業の改善や整理することはできず、ANAのように適切なタイミングで、戦略をもって売るという選択ができていませんでした。
「選択と集中ができたANA」と「決めきれなかったJAL」。経営判断の差で、大きく明暗が分かれたといえます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「ディズニー離れ」のうわさは本当か 入園者2700万人と売上のギャップ
東京ディズニーリゾートの入園者数は年間約2700万人で横ばいに見えるが、売り上げは過去最高を更新。猛暑やチケット値上げによる「ディズニー離れ」のうわさと、好調な業績のギャップを解説する。
「アサヒとキリン」どこで差がついたのか? 数字が語る両社の選択
アサヒとキリンは、どこで差がついたのか? 財務や事業戦略の数字から成長の分かれ目を分析。海外展開や多角化、国内ブランド戦略の違いから、今後の競争の行方を読み解く。
ドンキは本当に最強なのか? 地方スーパーが突きつける“一強多弱”の限界
国内外で快進撃を続けるドンキに異変か。圧倒的な現場主義で拡大を続ける一方、地方発スーパーが「超本社主義」で成長を遂げ、王者の牙城を脅かし始めている。
サイゼの「300円ドリア」はいつまで続く? “デフレの申し子”が直面する試練と選択
外食チェーンが次々と値上げに踏み切る中、サイゼリヤは低価格路線を堅持しています。しかし、原材料費や人件費の高騰により、国内の利益率は低下。安さを維持する戦略に限界はあるのでしょうか。
「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
牛丼の価格戦争――。この言葉を目にすると「懐かしいなあ」と感じる人も多いかもしれないが、いまや「500円時代」の足音が聞こえてきた、といったところでしょうか。牛丼チェーン3社の業績を見ると、明暗がわかれているようで。
