「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地:【2025年メガヒット記事】(4/7 ページ)
インバウンド需要が旺盛で、日本の観光業界が盛り上がりを見せています。では、航空会社の業績はどうなっているのでしょうか。JALとANAの決算をベースに分析したところ……。
JALとANAの成長性、差をつけた要因
このようにして、万年2位だったANAが、ビジネス面や実績面でJALを上回るようになりました。両者の国内線と国際線での座席キロ(座席数×飛行距離の合計)や収益率を見ても、その差は明らかです。
ANAは昔は国内線がメインだったこともあり、国内線の座席キロは、かなり前からJALを上回っています。JALは破綻により路線を削減せざるを得なかったこともあり、国内線の座席キロは減少。両者の差は大きく開きました。
国際線の座席キロを見ると、JALは破綻前から徐々に縮小し、2015年ごろに、ANAがJALを上回りました。これはANAが2011年以降、国際線の拡大に力を入れたことが大きく影響しており、JALがANAとの競争に敗れ、徐々にANAが存在感を強めていっていることがうかがえます。
ここで注目すべきなのは、国内線と国際線の旅客数において、ANAはコロナ前の水準に戻りきっていないにもかかわらず、安定した利益を確保し、2024年3月期に過去最高益を記録しているという点です。
なぜ、このような逆転劇が起きたのか。もちろん、「需給ギャップによる単価上昇」「選択と集中」を行うという決断ができたか否かも大きく影響していますが、両者のコスト意識の差も影響していると考えられます。
パイロットや客室乗務員(CA)にかかる交通費も、その一つの例です。パイロットやCAは、運航に万が一の事態が発生した際、きちんと乗客を避難させるための保安要員とみなされています。そのため、きちんと休息をとったり、飲酒量を厳しく制限したりして、日ごろから体調を整えておく必要があります。
そんな保安要員としてのパイロットやCAですが、運航時間の関係で、深夜に勤務を終えて帰宅せざるを得ないこともあります。そうした帰宅のための交通手段として、JALはパイロットにはハイヤー、CAにはタクシーをそれぞれ利用させていました。
一方で、ANAはパイロットはタクシー、CAは午後10時前であれば公共交通機関で帰宅させるなど、きちんと体調面に配慮しながら、できる限りコストを削減してきました。
また、JALにおいては、JASとの統合の際、労働組合をきちんと統一できず、退職金や年金を削減できなかったことも、財務状況に負の影響を与えています。それに加え、JASとの統合で地方路線に重複が生じ、赤字路線も複数あったにもかかわらず、こうした不採算路線を整理できなかったことも、経営に大きな影響を与えました。
こうした「選択と集中」やコスト削減に対する意識などが、ANAの成長につながったといっても過言ではないでしょう。
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