「30万円以上の初任給? そんなのムリ!」嘆く中小企業の人事部長 どこまで続く“賃上げ格差”:「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)
広がりゆく大手と中小の「賃上げ格差」。採用に悩む中小企業はどうすればよいのか。データをもとに解説する。
中小企業は「お金以外の価値」で勝負せよ
賃上げ格差の拡大は止まらない。大企業と同じ土俵で戦っても、中小企業に勝ち目はないだろう。では、何ができるのか。
CRAYONZの調査では、賃金以外で人材流出を防ぐ施策についても聞いている。結果は以下の通りだ。
- 正当な人事評価制度の構築(46.1%)
- 良好な人間関係やコミュニケーションを促進する組織風土づくり(41.8%)
- 福利厚生の拡充(34.6%)
評価制度、組織風土、福利厚生。これらは必ずしも大きな資金を必要としない。中小企業でも取り組める領域である。
とくに注目すべきは(1)の「正当な人事評価制度」だ。半数近くの経営者が、これを重要な施策と考えている。それはなぜか。
若い世代は「公平性」に敏感だからだ。給与が低くても、その理由が明確で、努力が正当に評価されるのなら納得できる。一方、不透明な評価制度のもとでは、どんなに給与が高くても不満が生まれる。
「誰が、何を評価して、どう昇給・昇格が決まるのか」を明確にすることだ。そして、それを社員に丁寧に説明すること。これだけで、社員の納得度は大きく変わる。
「自社の価値の再定義」が生き残りのカギ
Z世代が出世よりも専門性を重視し、副業にも関心を持つという事実は、ヒントになるかもしれない。
成長機会を提供し、柔軟な働き方を認める。「お金」以外の価値を明確に打ち出すことが、中小企業の生き残り戦略ではないか。
人材の流動性はドンドン激しくなっている。しかしこれを嘆くだけではなく、チャンスと捉えることもできるだろう。
ビジネスにおいて、中小企業には大企業にない強みがあるからだ。意思決定のスピード、顧客との距離の近さ、組織の柔軟性。これらは誰もが認める中小企業の武器である。
それなら人材においても、大企業にはない強みを打ち出せばいい。例えばこんな打ち出し方はどうか。
「当社では、入社3年以内に、必ず重要プロジェクトのリーダーを経験できます」
「週1回のリモートワークが可能です。副業も条件付きで認めています」
「社長との月1回の個別面談で、キャリアの相談ができます」
経営陣と同じ目線で話ができる。意思決定スピードが速い。新たな挑戦をさせてもらえる。こういった具体的なメッセージが、Z世代に響くのだ。大企業にはない「小回りの利く組織」という強みを、前面に出すべきである。
また、たとえ新卒採用が難しくても、大企業からの転職組を狙う方法はいくらでもある。
大企業で数年働き、その限界を感じた若手社員。彼らは「お金」よりも「成長機会」「裁量」「やりがい」を求めている。このような人材こそ、中小企業が欲しい即戦力ではないか。
賃上げ格差の時代、中小企業に求められるのは「自社の価値の再定義」だ。給与で勝てないのなら、別の価値で勝負する。その価値を言語化し、発信する。そして、新卒だけでなく、転職市場にも目を向ける。
これが、中小企業が生き残る道だ。採用に悩む経営者、人事担当者は、まず「自社の強み」を改めて棚卸しすることから始めてほしい。
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