「AI? 結局業務にはあまり使えないでしょ」と嘆くマネジャーが見落としている決定的な視点:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
この上司のAIの使い方には決定的な問題がある。AIはいうなれば、高級車の「フェラーリ」のようなものだからだ。
機械やデジタルは「能力差を埋める」もの
現在、AIを「機械」や「デジタル」と同じものだと思っている人が少なくない。しかし「AI=便利ツール」という認識は大きな誤解である。
機械やデジタル技術は、基本的に「能力差を埋める」力がある。
自転車の場合を考えてみよう。足が速い人と遅い人がいたとする。この2人が100メートル走で勝負したら、大きな差がつくだろう。しかし自転車に乗れば、その差はほとんどなくなる。自転車は身体能力のギャップを埋めてくれる素晴らしいツールだ。
電卓も同じだ。暗算が得意な人と苦手な人がいる。3桁×3桁の計算をさせれば、その差は歴然だ。しかし電卓を使えば、両者は苦労せずとも同じ計算結果に到達できるだろう。電卓があれば、計算能力の差は大幅に縮小する。
デジタル技術もそうだ。交通費精算システムを使えば、手書きよりも圧倒的に効率的で正確になる。アマゾンや楽天で買い物をすれば、店舗を回るよりも短時間で比較検討ができる。地方に住み、車を持たない人にとって、これほど便利なツールはない。
これらはまさに「便利な道具」だ。操作を覚えれば、誰でも一定の成果に到達できる。だからこそ、企業はこぞってデジタル化を進めてきた。システムを導入すれば、個人の能力に依存せずに業務が回るようになるからだ。
AIは「能力差を広げる」装置である
しかし、AIはそういうものではない。
AIは電卓ではないし、交通費精算システムでもない。ボタンを押せば、誰でも同じレベルに到達できる道具ではない。アウトプットの再現性を高めるためには、工夫や試行錯誤が必要だ。
AIは能力差を埋めるのではなく、「能力差を広げる」ツールだといえる。冒頭の営業部長を思い出してほしい。彼の問いはこうだった。
「来期の営業戦略を考えてくれ」
「売り上げを伸ばす施策を出してくれ」
前提条件、自社の強み、競争環境も整理して伝えたが、当たり障りのない答えしか返ってこない。上司はしびれを切らし、
「そんなことは誰だって思いつく」
「過去にトライしたことがある。もっと別の戦略を考えて」
と、対話を繰り返しても、期待通りのアウトプットは返ってこない。だから部長は「使えない」と怒ったのだ。
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