年間「約7.6兆円」の経済損失 「心の不調」による休職が増えている理由(1/2 ページ)
今、「メンタル不調」を抱える社会人が増えている。会人の心の不調はなぜ増えているのか、企業は何をすべきなのか、データをもとに考えていく。
今、「メンタル不調」を抱える社会人が増えている。精神障害による労災請求件数は増加の一途をたどり、多くの企業がメンタルヘルスに問題のある社員の増加を認識している。
これは個人の問題にとどまらず、企業の業績や日本経済にも影響を及ぼす課題だ。社会人の心の不調はなぜ増えているのか、企業は何をすべきなのか、データをもとに考えていく。
企業の4割が社員の「心の病」を「増加傾向」と回答
「心の不調」に苦しむ社会人が増加していることは、各種統計データなどから確認できる。精神障害による労災請求件数は年々増加しており、2024年度は3780件と2010年度の3倍以上に上った。
これはあくまで労災請求に至った件数だ。仕事以外の原因による精神疾患や、仕事が原因でも労災請求には至っていないケースなども含めると、心の不調を抱える社会人の数はもっと多い。
日本生産性本部の「第12回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート 調査結果」によると、最近3年間における「心の病」が「増加傾向」と回答した企業は約4割、「横ばい」が約半数で、社員のメンタルヘルスの改善が難しい状況が見て取れる。
「心の不調」急増 データから見えてきた3つの要因
先に挙げた2つのグラフを見ると、労災請求件数は2023年度に前年度の1.3倍に増え、「心の病」の増減傾向については2023年に「増加傾向」が22.1ポイント伸びている。
心の不調の問題が拡大しているのはなぜなのか。考えられる要因をいくつか挙げてみよう。
コロナ禍以降の働き方の変化・人間関係の希薄化
先の企業アンケートでは、2023年、2024年ともに、「心の病」が最も多い年齢層は「10〜20代」という回答が最多だった。この理由として日本生産性本部は、「コロナ禍中に入社した若年層がテレワークなどで対人関係や仕事のスキルを十分に積み上げることができない中で、成長実感や達成感を持ちにくく、孤立感や孤独感を感じやすくなっている可能性」を指摘している。
最近の若者は失敗することを恐れ、明確な正解を求める傾向が強いと言われている。コロナ禍で対面で教えてもらえる機会が少なかったとしたら、上司や先輩の振る舞いを見て正解を探ることも難しく、余計に不安を募らせていた可能性がある。
あるいは、入社から数年たって思うような評価が得られないものの、何をどう改善すればいいのか分からないという状況も考えられる。分からないことを相談できれば良いのだが、入社直後に上司や先輩との接触が薄かったために信頼関係が築けず、一人で抱え込んでしまっているということもあるだろう。
職場の人間関係の希薄化により、困ったときに助けを求められない、周囲も気付いてあげられないという状況は、若手だけでなく全ての年齢層で起き得ることだ。
出社回帰
一方、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に分類された2023年以降、「週◯日以上出社」などルールを決め、以前よりも出社回数を増やそうとする会社が増えた。
リモートワークが原因で孤独ややりづらさを感じていた人にとっては良い変化だろう。しかし、リモートワーク中心の生活や仕事の仕方に慣れた結果、出社回帰がストレスになる人も少なくない。
出来事別の労災決定件数を見ると、2024年度の上位3つは「対人関係」(1519件)、「仕事の量、質」(519件)、「パワーハラスメント」(389件)となっており、「対人関係」が突出している。
オフィスで顔を合わせる頻度が高まることで、対人関係のストレスが増えている可能性が考えられる。他にも、ワークライフバランスが崩れる、通勤に時間や体力を奪われるなど、出社回帰が心の不調の引き金となるケースもありそうだ。
AIの台頭、物価上昇など、企業を取り巻く環境の変化
生成AIの圧倒的な進化や円安・高関税などビジネス環境の急激な変化を前に、多くの企業が変革を迫られている。そして、生き残りのための戦略として「人的資本経営」を掲げる企業が増えている。社員がいかに能力を発揮するかで企業の成長が左右されるという考え方だ。
その結果、会社は社員に「リスキリングせよ」「AIを使いこなせ」「イノベーションを起こせ」と迫る。そのような状況下、変化の波にうまく乗れずに自信をなくし、心の不調に至る人もいるのではないだろうか。
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