市場わずか10%の「すっぱい梅干し」で勝負 創業2年で黒字化した梅農家が、AIで挑む農業改革(2/4 ページ)
流通する梅干しの9割は甘い調味梅干し。残る10%の「すっぱい梅干し」に、和歌山の梅農家発ブランドが挑む。300店舗以上に拡大した同社が次に見据えるのは、AI選別機の自社開発と産地の未来だ。
スーパーからほぼ消えた「すっぱい梅干し」
先述したように、スーパーに並んでいる梅干しの多くは、甘く味付けされた調味梅干しだ。消費者のし好の変化に伴い、塩分3%ほどの食べやすい梅干しが主流になり、塩としそだけで漬けた昔ながらのすっぱい梅干しは、市場の10%ほどにまで縮小した。スーパーの棚からはほぼ姿を消しており、山本氏は「今後なくなってしまう可能性もある」と危機感を示す。
うめひかりが狙ったのは、その消えかけた市場だ。ただし、甘い梅干しを好む層を振り向かせようとしたわけではない。「すっぱい梅干しを買いたくても買えないという方が、実はたくさんいました。その方に向けて、私たちはすっぱい梅干ししか作っていませんと伝えています」と山本氏は説明する。
市場の10%という狭さは、販路開拓の難しさに直結する。事業を立ち上げた頃の山本氏は、自転車で店を回り「食べてください、おいしかったら取り扱ってください」と一軒一軒頼み込んだ。営業経験のない山本氏にとって、頼れるものは商品の味だけだった。
成約率は約10%。初年度は赤字で、百貨店の催事販売にも手を出したがうまくいかなかった。だが卸先の店舗に自ら立ち、試食販売を繰り返したことで風向きが変わっていった。リピーターが付き、店舗の売り上げが伸びると店主が別の店を紹介してくれる。小さな成功の積み重ねが、現在の300店舗以上の取引へとつながっていった。
取引先は酒屋や肉屋といった、こだわりの強い顧客を抱える店が中心だ。スーパーの品ぞろえでは満足できない食通の客が足を運ぶ店舗には、すっぱい梅干しを探している人も多いという。
山本氏が取引先に求めるのは「商品のことを理解してくれているかどうか」。商品を理解した店員が「すっぱい梅干しを探している方にはぜひ」と一言添えてくれるだけで、求めている人にきちんと届く。
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