「自分でやった方が早いから……」 部下の“不機嫌”を怖がる上司がチームの成長を止めるワケ:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
本来は部下に任せるべき仕事を抱え込んでしまう。いわゆる「物分かりの良い上司」だ。しかし、この優しさに見える行動が、実はチームの成長を止めている。
「自分でやったほうが早い」という甘い罠
部下に仕事を任せると、時間がかかる。クオリティーも落ちる。説明するのも面倒だ。だったら自分でやったほうが早い。
この判断は、短期的には正解に見える。確かに今日の仕事は片づく。しかし、これを繰り返すとどうなるか。部下はいつまでたっても成長しない。上司は業務を抱え込み、疲弊していく。上司が忙しくなるほど、さらに部下に任せる余裕がなくなる。典型的な悪循環だ。
ある物流会社の課長は、部下5人分の報告書を毎月すべて自分で書き直していた。「任せると修正に時間がかかるから」が理由だった。しかし3年たっても部下は報告書を書けるようにならなかった。当然だ。書く機会を与えられていないのだから。
「自分でやったほうが早い」は、今日の効率と引き換えに、明日の成長を捨てていると言っていい。
「嫌われたくない」がマネジメント力を落とす
しかし、本当の問題は「効率」ではない。「感情」だと私は思う。
多くの上司が部下に仕事を任せられない本当の理由は、「嫌われたくない」「機嫌を損ねたくない」という恐れにあるだろう。分からないでもない。私も同じだ。部下に厳しく指導して反発されるのは怖い。何度も「やり直し」を求めたらモチベーションが下がるかもしれないと思ってしまう。最悪の場合、「ハラスメントだ」と言われるリスクだってある。
こうした恐れから、上司は無意識に「リスク回避行動」をとる。面倒な仕事を振らない。基準に達していなくても指摘しない。「まあ、いいか」「こっちで修正するから」で済ませてしまうのだ。
このような「物分かりの良い上司」は、優しいとは言えない。単なる「怖がり」と言える。部下と向き合うことから逃げているだけなのだ。
そしてこの回避行動は、チームに深刻なダメージを与えるだろう。上司が何も言わないから、部下は自分の仕事のレベルが十分だと思い込む。改善のチャンスを失ったまま、何年も同じレベルにとどまる。気付いたときには、手遅れだ。
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