インタビュー
『ぴあ』が15年ぶりに“紙”で復活 出版不況の今、あえて雑誌を出す理由(3/5 ページ)
15年ぶりに『ぴあ』が紙の雑誌として復活する。出版不況の中で、なぜ今あえて雑誌を出すのか。背景には、デジタルメディアの課題と、紙を起点に接点を広げる新たな戦略があった。
AIと自動組版で制作コストを圧縮
最盛期の『ぴあ』は、約100人体制で誌面を制作していた。岡氏は「部数も内容も違うので、単純比較はできない」と前置きしつつも、復活する誌面をAIなしで制作した場合と比べると「従来の3分の1から4分の1程度の人数で回せている感覚だ」と説明する。
特に効率化の効果が大きいのは、情報収集と文章の構成・要約の工程だ。チケットぴあのデータベースに加え、クローリング(Webページの情報を収集する手法のこと)やAIを使って公演情報を取得・整理。大量のテキスト情報を収集・整理する作業は、人手のみだと膨大な時間がかかるが、生成AIの活用によって大幅に短縮できたという。
紙面への流し込みには、自動組版の技術を導入。原稿と各コンテンツをクラウド上で管理し、紙面レイアウトに自動で流し込む。自動組版自体は以前からある技術だが、パートナー企業と組んでコストを抑え、大量の情報を効率的に紙面化している。
一方で、AIでは対応しきれない領域もある。「紙面にした後、情報が正しく反映されているかの最終確認は、人の目視が必要だ。そこは意外とコストがかかる」と岡氏は語る。
さらに、情報がぎゅっと詰まった紙面の印象、アイコン表現、表組みの色合い、文字の大きさや字体といった、いわゆる「ぴあらしさ」は、デザイナーと協議しながら作り込む、人の手による領域だ。AIにぴあらしさを求めても、現時点ではまだ再現できる段階にはないという。
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