「本が読めない」時代に広がる“聴く読書” 350万人が利用する背景:サブスクの勝算と限界(3/5 ページ)
忙しさや生活環境の変化で本を「読めない」人が増える中、音声で楽しむ“聴く読書”が広がっている。オーディオブック利用者は350万人に達し、その背景や制作現場、利用実態の変化を追った。
「朗読」ではなく、もはや「音の作品」
オーディオブックと聞くと、ナレーターがただ本を読み上げるものだとイメージする人が多いかもしれない。しかし実際は、そんなイメージを覆すような作品が作られている。
オトバンクでは制作部門を内製化し、作品ごとにキャスティングや演出を設計。人気小説では複数の声優を起用し、まるでラジオドラマのような作品に仕上げることもある。
『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈著/新潮社)は「成瀬シリーズ」として人気を博し、2024年本屋大賞を受賞したが、そのオーディオブック化では12人の声優を起用したドラマ形式の作品に仕上げた。
また、BGMや効果音にもこだわっている。久保田社長によると、作品に登場するバイクのエンジン音を忠実に再現するため、実際にメーカーへ問い合わせて当時の車両を探し出し、録音したこともあったという。
収録後には、出版社でいう校閲のようなチェックを、複数段階に分けて実施する。収録音声のノイズカットや音量・間の調整を行い、読み間違いや不備がないかを確認する。
1作の完成に要する時間は作品によってまちまちだが、大きな修正などがなくスムーズに制作が進んだ場合、書籍が出た同じ月にオーディオブックとして配信できるという。
一方で、上下巻に及ぶような長大な小説で、複数人のキャストを起用したドラマ仕立ての場合、制作に1年近くを要するケースもある。制作には手間がかかるが、逆に言えば、それをやり切れる点もこの会社の強みなのかもしれない。
かつてはビジネス書や自己啓発本が多かったが、現在は小説や語学教材、新聞・雑誌の音声版のほか、オリジナルコンテンツなど、ラインアップも拡大している。
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