トヨタはなぜ“聖域”を公開したのか 3000億円拠点で見えてきた「勝てる理由」:高根英幸 「クルマのミライ」(3/6 ページ)
トヨタが研究開発拠点のトヨタテクニカルセンター下山を報道関係者に公開した。従来は社外秘だった研究開発現場においても、情報公開を戦略的に活用する姿勢が広まっている。トヨタのケースではどのような狙いがあるのか。
「原則社外秘」の姿勢が変化した理由
前述のように、基本的には自動車メーカーに限らず、工業製品を製造販売している企業が開発工程を明かすことはほとんどない。開発中の製品は社外秘であることが多く、事前に情報が漏れると商品の新鮮味が薄れかねず、ライバルメーカーの模倣を招く恐れもあるからだ。
生産現場にも多くのノウハウが詰まっており、詳細を明らかにすることは避けてきた。しかし、情報が伝わりやすくなった現代では、そういったトップシークレットをあえて公開することで、注目されることを狙う活動も珍しくなくなった。
昔は開発中の車両を公道でテストしても、一部の地元ユーザーの目に触れるだけだったが、スマホとSNSの普及によってネット上にさらされることも多くなり、秘匿性を保つのが難しくなったという事情もある。
中国の自動車メーカーも、トヨタに追い付け追い越せと研究開発に躍起になっているが、目標を追っているほうはある意味楽だ。特に、目標とするメーカーと同じベクトルで開発し、価格や性能などの指標で上回ればいい、というスタンスの新興メーカーは、基礎研究や先行開発のコストが少なく有利なのだ。
技術やトレンドを作り出すのは大変だが、二番煎じはそこまで苦労しない。そういった意味では、今回の取材会はライバルメーカーにとって情報の宝庫だったに違いない。
しかしトヨタはそんなことも織り込み済みで、今回の公開を自ら仕組んだに違いない。それだけ自社の作り出す製品に自信を持っている一方で、トヨタの置かれている状況に危機感を抱いているからだろう。
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