トヨタはなぜ“聖域”を公開したのか 3000億円拠点で見えてきた「勝てる理由」:高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)
トヨタが研究開発拠点のトヨタテクニカルセンター下山を報道関係者に公開した。従来は社外秘だった研究開発現場においても、情報公開を戦略的に活用する姿勢が広まっている。トヨタのケースではどのような狙いがあるのか。
トヨタが“秘密主義”から変わったきっかけ
トヨタだけでなく、自動車メーカーは従来、開発中の車両や技術などを企業秘密として公にしないことが一般的だった。しかし、新興メーカーの登場やインターネットの普及によって、情報公開をうまく利用することが重要になっている。
SNSの公式アカウントやティーザー広告(商品の断片的な情報のみを公開する手法)などで新型車の一部をチラ見せすることは、ライバルメーカーをけん制する有効な手段だが、現在はそれ以上に、情報公開そのものの重要性が高まっている。
中長期的な経営方針や製品展開戦略などのロードマップを発表することで、株価対策となるだけでなく、今後購入を検討するユーザーに対するブランドイメージの向上につながる。
2021年12月、トヨタはBEV(バッテリー式電気自動車)の販売に消極的だという見方を受けて、豊田章男社長(当時)が記者会見を開き、開発中のBEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)をズラリと披露して報道陣を驚かせた。
しかしその後、BEVの市場は世界的に冷え込み、トヨタ以外の大手自動車メーカーはBEVの戦略を見直す羽目になったのだから皮肉なものだ。トヨタが消極的だといわれた姿勢は正しかったのだ。
2021年、バッテリーEV説明会で開発中の電動モデルを一気に披露した豊田章男社長(当時)。実際にはクラウンスポーツなどハイブリッド車も含まれていたが、これだけの開発車両を公開したのはインパクトがあった(写真:トヨタ)
さらにさかのぼると、転機は2010年2月に米国で公聴会に呼ばれたことにあると思われる。前年のトヨタ車の暴走事故を受け、トヨタはより安全性を高めるためのリコールを実施。だが、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)には国民から苦情も寄せられ、米国政府による徹底した調査とトヨタへの追及が行われたのだ。
結果的には、車両側の制御に問題はなかったこと、トヨタ側が批判や質問に対し、丁寧かつ粘り強く説明を続けたことで、ようやく問題は収束に至ったのである。
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