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データセンター増設ラッシュで「東京1つ分の電力」が必要に 間に合わぬインフラ整備、東電の“奇策”は(1/2 ページ)

データセンターの親増設ラッシュによって、電力需要が高まっている。東京電力HDによると「東京都1つ分の電力」が必要になるという。しかし、インフラ整備は追い付いていない。この差をどう埋めようとしているのか。

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 データセンターと半導体工場の新増設によって、最大需要電力は10年間で約9倍に膨らむ。しかも、需要の伸びは東京圏に集中する――これは、電力広域的運営推進機関の見通しだ。2026年度に83万キロワットだった最大需要電力は、2035年度には762万キロワットに拡大するという。

 この変化の裏にあるのがAIブームだ。電力が足りなければ、AIが止まりかねない。つまり、AIをビジネスに組み込む企業が増えるほど、電力の制約は経営の制約になる。しかし、送電線を1本引くにも地元との合意形成に時間がかかる。

 「合意形成のスピードと、AIの進化のスピードがマッチしない」――東京電力ホールディングスの岡本浩氏(上席フェロー)は、電力インフラ側の対応が追い付いていない現状について、こう説明する。

 「AIの進化・普及」と「電力インフラの拡張、安定稼働」の間にある隔たりを、どう埋めるか。電力の供給者である東京電力ホールディングス、AIブームの前線に立つエヌビディア、電力インフラを担う日立製作所の3人が「電力」をテーマに現状と展望を語った。

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東京電力ホールディングス 上席フェローの岡本浩氏(筆者撮影、以下同)

本記事は、日立製作所が主催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」(9月3〜4日開催)の講演セッションから「エネルギー×AIで拓く持続可能な未来」を取材したもの。


データセンターの電力需要、“東京1つ分”に匹敵 インフラ整備どうする?

 三者は、日立製作所が主催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」の講演セッションに登壇して、電力を巡る動向について鼎談(ていだん)を繰り広げた。

 供給側の実情を示したのは、東京電力ホールディングスの岡本浩氏だ。同氏によると、東京電力の管轄エリアだけで、合計1500万キロワット(15ギガワット)分のデータセンターが電力系統への接続枠を確保している。

 確保している接続枠のうち、利用率を60%と仮定すると年間790億kWh(キロワットアワー)に上る。これは、同エリアで送配電を担う東京電力パワーグリッドが扱う全量の約30%に当たるという。東京都全体の電力消費量(約770億kWh、2024年度)に匹敵する需要が生まれる計算だ。

 問題は、電力を届ける設備が間に合うかどうかだ。需要の増加に合わせて工事量は増える一方で、人手は足りていない。さらに、送電線は敷設する地域の了解なしに建設できない。「合意形成のスピードと、AIの進化のスピードがマッチしない」と岡本氏は語る。

 岡本氏が示したのは、データセンター側との協働だ。例えば、電力に余裕のある変電所の近くにデータセンターを建てれば送電線が短く済み、稼働時期を早められる。運用面では、負荷が高い計算処理の実行タイミングをずらしたり蓄電池を使ったりすれば、電力系統の空き状況に合わせられる。

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データセンターの電力需要は東京都1つ分に匹敵する試算になる(出所:岡本浩氏の講演資料)

半導体の発熱を活用!? 東電が編み出した“奇策”とは 

 データセンターの電力を賄う方法として、岡本氏が解の一つに挙げたのが熱だ。データセンターに注ぎ込まれた電力エネルギーは、その大半が「熱エネルギー」に替わる。最新のGPU(画像処理半導体)の発熱密度は、原子炉にある燃料棒の表面に近づいているという。

 「半導体を冷やすのではなく、発熱体として活用すればよい。社会は熱エネルギーを必要としているのだから、その一部を半導体で賄えばよい」(岡本氏)

 東京電力ホールディングスが開発した冷却技術「WaBiCo」(Watt Bit Cogeneration)は、ポンプを使わずに「熱が熱を運ぶ」技術だ。0.5気圧まで下げた水をGPU表面で沸騰させ、80度近い熱エネルギーとして回収する。2026年7月には東京都の「データセンター廃熱利用実装促進事業」として実証が始まった。

 岡本氏は「人体」に着想を得たと述べる。脳の重量は体重の2%ほどだが、体全体が消費するエネルギーの約20%を使い、最も発熱する器官だ。人体になぞらえば、AIは社会全体の20%くらいのエネルギーを使うかもしれない。「だが、AIの電力消費はフレキシブルで、処理は時間も場所もずらせる。この柔軟性でグリッドを安定化できる」と岡本氏は語る。電力(ワット)と情報(ビット)を熱エネルギーでつなぎ、地域社会で循環・消費する「ワット・ビット連携」の構想だ。

AI稼働に必要な処理能力は「1000倍」に NVIDIA、チップ設計を工夫

 電力需要の伸長について、AI開発に携わる企業はどうみているのか。米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2026年1月のダボス会議で、AIを支える構造を「5層のケーキ」に例えた。エネルギーを最下層にし、チップ、インフラ、モデル、アプリケーションの順で層が重なる。エヌビディアの齋藤弘樹氏(ストラテジックアカウント本部 本部長)は「エネルギーはAIの第一のゲートだ」と述べる。

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エヌビディア ストラテジックアカウント本部 本部長の齋藤弘樹氏

 AI技術は、急速に進化している。2022年11月の「ChatGPT」登場を起点にすると、2025年1月の中国製の推論モデル「DeepSeek」の推論モデルを稼働させるために必要な処理能力は100倍に増え、その約1年後に登場した自律型エージェント「OpenClaw」では必要な処理能力が1000倍に達した。

 AIの処理能力が向上するほど、電力消費量が増える。NVIDIAは、チップの設計において電力当たりの性能向上に努めている。現行世代のGPU「Blackwell」に対し、最新世代のGPU「Rubin」は同じ電力で10倍のエージェント処理が可能だという。

 運用も変わる。NVIDIAはAI向けインフラを「AIファクトリー」と呼ぶ。「従来のデータセンターは止めない運用が求められてきた。AIファクトリーでは、処理能力をどこまで最大化できるかまでが責任範囲になる」と齋藤氏は語る。

 処理効率の改善が、電力消費量の伸びをカバーできる保証はない。「一度使ってしまうと、もう戻れない。需要の高まりがわれわれの努力を超えてしまわないようにしなければならない」と同氏は述べた。

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AIエージェントの進化(出所:齋藤氏の講演資料)

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