「日本のデータ活用は“植民地”状態になる」 ウイングアーク1stが警告、求められる日本企業の「自立」(1/3 ページ)
ウイングアーク1stは新データ基盤「DataTetra」の提供を10月21日から開始している。AIコストの急増やベンダー依存といった課題ん挑む、新たな設計思想とは。
「自分の預金を引き出すのに、毎回ATMの手数料を取られているようなものだ。このままでは、日本のデータ活用は“植民地”のような状態になる可能性がある」
企業向けソフトウェアサービスを開発・販売するウイングアーク1stの取締役執行役員CTO(最高技術責任者)である島澤甲氏は、現在の企業におけるAI活用、データ活用のゆがみをこう表現する。
同社は10月20日、企業のAI活用を前提に設計した新たなデータ活用基盤「DataTetra」(データテトラ)を発表し、10月21日より順次提供を開始した。同製品について、向こう3年間で30億円規模のビジネスへ育てる目標を掲げている。
生成AIブームの陰で、多くの企業が「コストの高騰」「ベンダーロックイン」(特定のベンダーに依存し、他社の製品やサービスへの移行が困難になること)といった課題に直面している。そうした中、長年データ活用を支援してきた同社が打ち出したのが、“ユーザー主権”を強化するアプローチだ。記者発表会の内容から、新たなデータ基盤の設計思想に迫る。
「来期のAI予算が20倍に跳ね上がった」 企業のAI活用を阻む「3つの壁」
島澤氏がDataTetra開発の背景としてまず提示したのは、AIを業務に組み込む際に企業が直面する「3つの壁」だ。
第1の壁は「コンテキスト腐敗」だ。人間の場合、経験を重ねるほど生産性が向上し、自走する傾向があるのに対し、現在のLLM(大規模言語モデル)は蓄積させるデータや文脈量が増えると、精度が低下する。島澤氏は「人は育てれば育つが、AIはデータを積むほど期待値を下回る。運用を維持するために人間がAIをモニタリングし続けることが必要になっている」と指摘する。
第2の壁は「安定性」だ。APIは提供元の都合で仕様や応答品質が変動し、一時的な停止障害が発生する可能性もある。さらに米国の政策や規制といった地政学的リスクの影響も受けやすく、企業の基幹業務を過度に外部AIへ依存させることにはリスクが伴う。
そして、同社も直面したのが第3の壁「コスト」だ。オンプレミスや従来のSaaSであれば運用コストはある程度収束・予測できるが、AIは適切に統制しなければ、コストが膨らみ続けるリスクがある。島澤氏は「当社内で試算したところ、来期のAI予算が今年の20倍に跳ね上がるという事態が実際に起きた」と生々しい実体験を明かした。
あらゆる非構造化データへのアクセスや処理をAI経由で実施すると、インプットとアウトプットのたびにコストが発生し続ける。自社の競争力の源泉であるデータを取り出すために絶えずコストを支払い続ける構造を、島澤氏は「ATMの手数料」に例え、国内企業の投資余力が海外ベンダーへ流出する危機感を訴えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
日産、全社基盤「Nissan.DATA」は何がすごい? 「使えば使うほど、会社が賢くなる」仕組みの構築
日産自動車では、全社データ基盤の運用を進める一方、多様なデータをいかにAI時代に即した「組織の知」へ進化させるかが課題となっていた。「Data for AI、AI for Data」を掲げ、データとAIの循環を高める同社の挑戦に迫る。
旭化成が経費精算で「年間6.5万時間」を削減できたワケ “勘に頼らない”DXの実践
多角的な事業を展開する中で、ツールの現場定着とデータ活用に挑む旭化成。徹底した可視化と適切なハンドリングでバックオフィス業務の効率化を実現した「勘に頼らないDX」の取り組みに迫る。
DXの反省を生かせ AIで「月間9万時間」「4.7億円相当」の業務削減をしたレゾナックの「共創モデル」とは
AIツールを配布しても、全社的な業務変革にまで結びつかない企業は少なくない。レゾナック・ホールディングスは、AIライセンスの全社への導入から約半年で、活用率95%を達成し、月9万時間の業務削減に成功した。現場発のアイデアを全社資産へと変える「独自の共創モデル」の全貌に迫る。

