01 伝統との融合で、新しい文化の花が咲く変わる赤坂、変わらない赤坂(2/3 ページ)

» 2008年04月15日 00時00分 公開
[ITmedia]
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  • ひよこだってやるぜ! 赤坂・いまむかし
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ひよこだってやるぜ! 赤坂・いまむかし
お話をうかがったおふたり
川合寛妥さん

川合寛妥さん

こだわりの新大正糯米を素材に多彩な商品を開発し、全国展開するおかきの名店「赤坂柿山」2代目であり、赤坂を盛り上げようと活動するボランティア組織「赤坂ひよこクラブ」代表。

http://www.kakiyama.com/

隅谷彰宏さん

隅谷彰宏さん

マッカーサー元帥と吉田茂元首相のスーツを仕立てた、初代テーラー・隅谷太郎さんの意志を継ぐ「TAILOR & CLOTHS」3代目であり、同じく赤坂の振興に熱意を燃やす「赤坂ひよこクラブ」副代表。

http://tailor-cloths.com/index.html

+D Style:赤坂は、「+D Style」読者にはちょっと敷居が高く、デートや友人同士などでわざわざ訪れる機会が少ない、年齢層の高い街というイメージがあると思うんですよ。そういったアダルティな街で、お二方とも、若い頃から街の変遷を見ていらしたわけですよね。

川合さん:私の場合は、家業の「赤坂柿山」本社は赤坂にありますが、実際に住んでいたのは幼稚園の2年ほどです。親父が赤坂に店を出すときに街の旦那衆に「赤坂に住んで小唄を習わないと赤坂の商売の仲間には入れられない!」ぐらいに言われたそうです。でもそれを守ったら新参者の親父にもみんな良くしてくれたそうですけどね。

川合さん

隅谷さん:僕は子供の頃から赤坂の人間ですが、ちょうどバブルがあったのが中高生くらいの時だったんですね。バブルの震源地は赤坂ですから、当時、「自分は恵まれてるのかな?」と思うような場面はたしかに多々ありました。でも結局、あれよあれよという間にバブルがはじけて、大学を卒業する頃には就職氷河期になっていた(泣)。個人的にはバブルの恩恵はなんにも受けていないです。

川合さん:そう! たった8カ月で退陣した細川政権や官官接待、不良債権など、それまでの政財界のアクと膿がクローズアップされるたびに、日本経済はどんどん落ち込んでいったよね。不良債権のせいで、大手企業やアンダーグラウンドの資本が入り込み、街の雰囲気が変わり始めた。それで、昔はあった地元商店街のつながりも徐々に弱まってしまったかもね。

隅谷さん
「梅の木」店主

隅谷さん:飲み食いや買い物で、領収書が切れなくなったでしょう。それまでの赤坂は、自分の財布を開いて来る人なんてほとんどいないわけだから、大打撃だったんですよ。だから、傍目からは「ボンボンで恵まれてる」と思う方もいるかもしれないけれど、僕らの世代の2代目、3代目というのは、ほとんどが街の負の遺産を背負った「びんぼっちゃま」なんですよ。

+D Style:それで「赤坂ひよこクラブ」という組織が発足したと。ゴミ拾いなどのボランティアやTBSなどとのコラボレーションで、街の活性化活動をなさっていますよね。会員は何人くらいいらっしゃるんですか?

隅谷さん&川合さん

隅谷さん:50人くらいですね。跡取りだけじゃなくて、新興で商売している方もいます。赤坂の再開発が良いきっかけにはなりましたよね。先ほど申した通り、内情はみんな大変です。左うちわなのは川合さんのところくらいかな(笑)。

川合さん:そんなことないよ!(苦笑) おかき市場は、そう大きな浮き沈みはないけれど、節句を祝ったりする日本文化の風習がすたれたり、コミュニケーションが希薄な時代になって、お菓子が買われなくなってきてるからね。とはいえ、「そこそこ食べられる、何とかなる」という経済状態の人が多いのが、赤坂盛り上げのモチベーションがわかない原因のひとつだよね。もっと、どん底まで経験した方が、真剣に何とかしようと考えるだろうと。

隅谷さん:赤坂は、世界の中における日本と同じなんですよ! 世界は動いているのに、日本はぬるま湯の中にいる。赤坂も、周囲が動いていても、自分たちは動かない、変わらない。永田町と赤坂は、常にリンクしていますから。

+D Style:をををっ、大きな話になってきましたが、伝統や格式のあるところでは、何か新しいことをやると、受け入れられるのがなかなか大変なものですよね。そういったご苦労はありますか?

隅谷さん:苦労だらけ! と言った方が正しいですね。

+D Style:そ、そうですか、失礼いたしました(汗)。では、「赤坂サカス」のオープンで、新しい赤坂の盛り上がりが期待できるのでは?

川合さん、隅谷さん:できませんね!

+D Style:えっ、そうなんですか!? おふたりとも、声がハモられましたね。地元の方は共通のご意見の方が多いのでしょうか。

川合さん:サカスには、とても感謝しています。しかし、ただ期待をするばかりでなく、せっかく人に注目された赤坂を我々で自発的に盛り上げ、料亭文化やおもてなしの心、祭りなど、今の世の中に良い伝統を伝えていくべきと思っています。

隅谷さん:料亭や飲み屋などの遊び方にしても、昔は上の人が教えてくれたものですけれど、今は分からない方が多いと思いますし。

川合さん:例えば、芸者さんから艶っぽい立ち居振る舞いを学ぶのも面白いと思いませんか? 若い方から、アジアの人々、世界へも、みんなが集まって楽しめる中で伝えていけるような活動を続けていきたいですね。

対談協力「梅の木」

隅谷さん行きつけの、路地裏の鮨店。店主の川久保登志雄さんは、赤坂で29年寿司を握り続ける。旬のつまみがあれこれ出てくる「鮨懐石」がおすすめ(8000円より)。

東京都港区赤坂5-1-30進藤ビル1階
03-3586-6980(カウンター9席なので、できれば予約を)
平日12:00〜14:00 18:00〜23:30
土曜 17:00〜23:00
日・祝日定休日

http://www.cam.hi-ho.ne.jp/umenoki/

「梅の木」

取材・文/似鳥陽子



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