中東の真珠・マスカットへの誘い特集 美しき古の都市(2/3 ページ)

» 2008年10月06日 09時30分 公開
[ITmedia]
  • リゾート都市・マスカットで
伝統的アラブの文化に触れる
  • 世界一高級な香水の産地アムアージュの工房を訪ねる
  • 隠れ家ホテルでセレブ気分を味わう1日
世界一高級な香水の産地 アムアージュの工房を訪ねる

 オマーンが誇る名産品は香水である。ホテルやショッピングセンター、オフィスにまで至るところにお香がたかれており、甘くエキゾチックな香りが漂っている。中でも、イエス誕生の贈り物としてささげられたとされるフランキンセンス(乳香)は、はるか古代より黄金に値するものとして取り引きされてきた貴重な香料である。

 心を和ませ呼吸を落ち着かせるフランキンセンスは、瞑想時に祭壇や寺院でたかれたり、エジプトでは化粧品や医薬品、ミイラの防腐剤としても使われていたのだそう。樹脂の粒であるので、触感は弾力があり、地元ではガムのように口の中で噛んでいる人もいる。

フランキンセンス

 そのフランキンセンスを原料に使った、世界でも最高級の香水のひとつと賞されるのが、王室が工房を所有しているという「アムアージュ(Amouage)」である。空港の免税店でもうやうやしくディスプレイされており、他のブランドの香水のテスターはあるのに、この香水だけはテスターがなく、どんな匂いがするのか嗅がせてもらうことはできない。

アムアージュ(Amouage)

 そんな超セレブ香水の香りを思う存分堪能できて、お得な量り売りのおみやげもGETできるのが、「アムアージュ」本社の工房である。空港からタクシーに乗ることわずか10分ほど。“王室が所有する世界最高級の香水の工房”というイメージから、お城のような建物を想像していると拍子抜けする、花と水に囲まれた可愛らしい工房が現れる。重々しい木の扉を開けると、薔薇に似た優雅で甘い香りに包まれた。これが、空港の免税店では嗅ぐことが叶わなかった念願の香りである。

「アムアージュ」本社の工房

 製法などについて、詳しく説明してくれたショップマネージャーの話によると、「アムアージュ」が世界最高級の香水であると称されるのにはさまざまな理由があるが、ひとつにはロマン溢れる誕生秘話だ。

 1983年、石油王・Sayyid Hamad bin Hamoud al bu Saidは、古くからアラブに伝わる香水技術を復興させるという夢を見た。その夢を実現するためにフランスから、エルメスのカレーシュや、ロシャスのマダムロシャスなどを手がけた調香師・Guy Robertを呼び寄せた。アラブの原材料とフランスの精油・製法というコラボレーションによって、名調香師が現代に再現した石油王の夢が「アムアージュ」なのである。

テスターの中にさりげなく置かれたコーヒー豆は、香水の匂いで麻痺した嗅覚をリセットするために置かれている。

 また、調合から瓶詰めまで完全にハンドメイドの製法、ブレンドされる50種以上の精油、フランス製クリスタルや24金を使用しモスクをかたどった容器など、材料を惜しまずに贅を尽くした製法も、世界最高級の冠をほしいままにしている。

 気になるお値段は、銘柄にもよるが50ミリリットルのオードトワレで40〜70RO(12000〜21000円)、ここでしか買えないというお得な量り売りのもので30RO(9000円)ほど。

 貴重とはいってもおみやげとしてはかなり高価ではある。もう少し手軽で、なおかつ日本はもとより他国でも入手が難しい、レアなグッズもあるので紹介しよう。ルームコロンが18RO(5100円)、ボディソープやクリーム、アロマキャンドルなどは20〜30RO(6000〜9000円)で手に入る。もともとフランキンセンスには、肌のアンチエイジングや気管の炎症などを鎮静する効果、精神を落ち着かせ幸福感をもたらす働きがあるので、男性・女性をとわず利用価値が高い。ちなみに、フランキンセスの原料自体は空港の免税店やスークで簡単に入手できるので、話のネタとして買っていってはいかがだろう。

フランキンセス

 さて、アラブのショッピングは、ディスカウントの駆け引きを楽しむのが醍醐味である。王室所有のショップでも果たして値引きに応じてくれるのか、おそるおそる申し出ると、マネージャーはウィンクして10%値引きしてくれ、さらに試供品の香水をたくさんおまけにつけてくれた。

 さまざまなストーリーに彩られた「アムアージュ」は、自分用ならステイタス感を演出し、大切な人へ選べば、遠い異国からのプレシャスなおみやげとして喜ばれることは間違いない。

取材・文/似鳥陽子



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